複数のファクタリング会社を並行して使うリスクと管理

「1社では足りないので、別のファクタリング会社も使ってよいのだろうか」
「複数社を同時に利用していると、どこでトラブルが起きやすいのか知りたい」

ファクタリングを継続して利用している会社の中には、2社、3社と複数のファクタリング会社を並行して使っているケースがあります。
1社あたりの買取上限に達した、手数料の条件を比べたい、急ぎの案件だけ別の会社に頼みたいなど、理由はさまざまです。

複数社の利用そのものは禁止されているわけではありません。
しかし管理を誤ると、意図しない二重譲渡や送金漏れといった、取り返しのつかないトラブルにつながります。
この記事では、複数のファクタリング会社を並行して使う際のリスクと、それを防ぐための具体的な管理方法を解説します。

複数社を並行利用する主な理由

1社の買取上限を超える資金が必要

ファクタリング会社は、売掛先の信用力や自社との取引実績に応じて、1社あたりの買取枠を設けていることがあります。
必要な金額が枠を超える場合、別の会社に残りの債権を持ち込むことになります。
売掛先が複数ある会社では、売掛先ごとに得意なファクタリング会社を使い分けることもあります。
たとえば、官公庁や大手企業向けの債権は手数料の低い会社に、取引歴の浅い売掛先の債権は審査の柔軟な会社に、というように振り分ける方法です。
この使い分け自体は合理的ですが、売掛先と会社の組み合わせが増えるほど、後で説明する管理の負担が重くなっていきます。

条件やスピードを比較したい

同じ債権でも、ファクタリング会社によって提示される手数料や入金までの時間は異なります。
2社間ファクタリングの手数料は10〜30%程度、3社間では1〜9%程度が目安ですが、その幅の中でどこに位置づけられるかは会社ごとの審査次第です。
複数社と取引関係を持っておくことで、案件ごとに条件の良い会社を選べるというメリットがあります。

1社に依存するリスクを避けたい

特定のファクタリング会社だけに頼っていると、その会社の審査方針が変わったり、営業を縮小したりしたときに資金調達の手段を失います。
取引先を分散させておくことは、資金繰りの安定という点では合理的な考え方です。
ただし、分散させるほど管理すべき情報は増えていきます。

また、繁忙期に1社の審査が混み合って入金が遅れるといった事態に備え、予備の取引先を持っておきたいという考え方もあります。
いずれの理由であっても、並行利用は「管理できる範囲に限る」ことが大前提になります。

並行利用で起こりやすいトラブル

最も重大なのは二重譲渡

複数社を利用する際に最も注意すべきなのが、同じ売掛債権を2つのファクタリング会社に譲渡してしまう二重譲渡です。
故意であれば詐欺罪に問われる可能性がある重大な行為ですが、実務では管理のずさんさから意図せず起きることもあります。
たとえば、同じ売掛先に毎月請求書を出している場合、どの月の請求書をどの会社に売却したのかが曖昧になると、同じ債権を別の会社に持ち込んでしまう危険があります。

対抗要件をめぐる争い

民法第466条により売掛債権の譲渡は原則として有効ですが、同じ債権が二重に譲渡された場合、どちらのファクタリング会社が優先するかは第三者対抗要件の具備で決まります。
民法第467条では、確定日付のある証書による通知または承諾が対抗要件とされ、債権譲渡特例法により登記によって第三者への対抗要件を具備することもできます。
つまり、二重譲渡が起きれば、ファクタリング会社同士の優劣争いに自社が巻き込まれることになります。
その過程で、どちらか一方の会社から契約違反として損害賠償を求められる可能性もあります。

2社間ファクタリングでは売掛先に通知を行わないことが多く、登記も省略される場合があります。
そのため、二重譲渡が起きていても当事者が気づかないまま時間が経ち、売掛先の支払期日になって初めて問題が表面化することがあります。
発覚した時点では、すでに両方の会社から買取代金を受け取っているため、片方の会社に対して代金相当額を返還しなければならない状況に陥るのが典型的なパターンです。

送金の漏れや遅れ

2社間ファクタリングでは、売掛先からの入金をいったん自社で受け取り、それをファクタリング会社に送金します。
利用する会社が増えるほど、送金先、送金期日、金額の組み合わせが複雑になります。
入金された資金を別の支払いに回してしまい、ファクタリング会社への送金が遅れると、契約違反として一括での支払いを求められる事態にもなりかねません。

手数料負担が見えにくくなる

1社ごとの手数料は把握していても、複数社を合計した月間の手数料負担は意外と把握されていません。
A社で15万円、B社で20万円、C社で12万円と重なれば、1か月で47万円のコストです。
会社ごとに見ると小さく見える手数料も、合計すると利益を大きく圧迫していることがあります。
さらに、複数社の利用が続くと、毎月の入金の多くがファクタリング会社への送金に回り、手元に残る資金が少なくなっていきます。
その不足を埋めるために次の債権を売却する、という循環に入ると、抜け出すのは容易ではありません。
手数料は1回ごとの金額ではなく、月単位、年単位の累計で把握することが欠かせません。

並行利用の前に確認すべきこと

契約書の条項を読み直す

ファクタリング契約書には、対象債権について他社に譲渡していないことを表明する条項や、他社との取引状況を申告する義務が定められていることがあります。
こうした条項に違反すると、契約解除や違約金の対象になる場合があります。
新たな会社と契約する前に、既存の契約で他社利用がどう扱われているかを必ず確認してください。

審査では利用状況を正直に伝える

新しいファクタリング会社の審査では、他社の利用状況を尋ねられることが一般的です。
ここで利用中の会社を隠しても、通帳の入出金記録や債権譲渡登記の有無から判明することが少なくありません。
事実と異なる申告は信頼を失うだけでなく、契約上の問題にもなります。
現在の利用状況を正確に伝えたうえで、条件を提示してもらう方が結果的に良い取引につながります。
他社で順調に送金を続けている実績は、むしろ信頼の材料として評価されることもあります。

並行利用を安全に管理する方法

🗂 管理の3点セット
① 債権譲渡台帳(どの請求書を、どの会社に、いつ売却したか)
② 送金カレンダー(どの会社に、いつ、いくら送金するか)
③ 月次手数料集計(全社合計でいくら払っているか)

債権譲渡台帳を作る

最も重要なのが、売却した債権を1件ずつ記録する台帳です。
売掛先名、請求書番号、請求金額、支払期日、売却先のファクタリング会社、売却日、買取金額を1行にまとめます。
新たに債権を売却するときは、必ずこの台帳で同じ請求書がすでに売却されていないかを確認する手順を徹底してください。
請求書の側にも売却済みの印をつけておくと、確認漏れをさらに防げます。
台帳は経理担当者だけが持つのではなく、営業や経営者も閲覧できる場所に置いておきましょう。
売掛先から支払期日の変更や請求額の修正の連絡が入ったとき、その債権がすでに売却済みかどうかを誰でもすぐに確認できれば、ファクタリング会社への連絡漏れも防げるからです。

送金カレンダーを作る

2社間ファクタリングを利用している場合は、売掛先の入金予定日と、ファクタリング会社への送金期日を並べたカレンダーを作ります。
入金を確認したら当日中に送金する、送金用の口座を分けておくといった運用ルールを決めておけば、資金を他の支払いに回してしまう事故を防げます。
複数の会社への送金期日が重なる月末は、とくに注意が必要です。
送金を終えたら、振込の控えを台帳の該当行にひも付けて保存しておくと、ファクタリング会社から照会があったときにもすぐに説明できます。

手数料を月ごとに合計する

毎月末に、全社分の手数料を合計して記録します。
売上高に対する手数料の比率を計算し、一定の水準を超えたら利用を見直すといった基準を設けておくと、依存が深まる前に歯止めをかけられます。
あわせて、会社ごとの平均手数料率を並べてみると、条件の悪い会社を使い続けていないかも一目でわかります。
手数料の合計が営業利益を上回る状態が続いているなら、ファクタリングの使い方そのものを見直すべき段階です。

並行利用を続けるか見直すか

複数社の利用が常態化している場合は、一度立ち止まって全体を見直すことをおすすめします。
利用する会社を1社か2社に集約すれば、取引実績が積み上がって手数料の条件が改善される可能性があります。
管理の手間も大きく減ります。
集約先を選ぶ際は、これまでの手数料の水準、入金までのスピード、担当者の対応の丁寧さ、契約内容の明確さを比べて、最も安心して付き合える会社を残すのがよいでしょう。

また、ファクタリングを毎月のように複数社から利用しなければ資金が回らない状態は、資金繰りの構造そのものに課題がある可能性を示しています。
売掛先との支払条件の交渉、銀行融資への切り替え、固定費の見直しなど、ファクタリング以外の打ち手と組み合わせて、利用額を徐々に減らしていく計画を立てることが、長期的な経営の安定につながります。

まとめ

複数のファクタリング会社を並行して使うこと自体は禁止されていませんが、管理を誤ると二重譲渡、送金の漏れ、手数料負担の増大といった深刻なトラブルを招きます。
とくに二重譲渡は、ファクタリング会社同士の対抗要件をめぐる争いに発展し、契約違反の責任を問われるおそれもある重大なリスクです。
並行利用をする場合は、既存契約の条項を確認し、審査では利用状況を正直に伝えたうえで、債権譲渡台帳、送金カレンダー、月次の手数料集計という3つの管理ツールを整えましょう。
利用が常態化しているなら、利用先の集約やほかの資金調達手段との組み合わせも検討してください。

【参考法令】民法第466条〜470条(債権の譲渡)/債権譲渡特例法(動産及び債権の譲渡の対抗要件に関する民法の特例等に関する法律)

チョウタツ王 お客様の声