化粧品・雑貨OEMの生産前資金をファクタリングで確保する

化粧品・雑貨OEMの生産前資金をファクタリングで確保する

「大口のOEM案件を受注したが、原料と資材を先に仕入れる資金が足りない」
「納品後の入金まで数か月かかり、次のロットの生産に踏み切れない」

化粧品や雑貨のOEM製造は、受注が決まってから入金されるまでの期間が長い業態です。
原料や容器、パッケージ資材を先に調達し、製造、充填、検品を経て納品し、そこから委託元の締め日と支払サイトを待つことになります。
受注が増えるほど、先に出ていくお金も増えるという構造を抱えています。

この記事では、OEM事業者が生産前に必要となる資金を、ファクタリングを使ってどう確保するかを、できることとできないことを区別しながら解説します。
資金調達の選択肢を広げたい製造業の経営者や財務担当者の方は、ぜひ参考にしてください。

OEM製造の資金繰りが苦しくなる理由

入金までの期間が長い

化粧品や雑貨のOEMでは、受注から原料・資材の発注、製造、検品、納品までに2〜3か月かかることも珍しくありません。
さらに納品後、委託元の月末締め翌月末払いや翌々月末払いといった支払サイトが加わります。
受注から入金までの合計が4〜5か月に及ぶケースもあり、その間の原料費や人件費はすべて自社で立て替えることになります。
化粧品の場合は、処方の確定や安定性試験、表示内容の確認といった工程も入るため、スケジュールが後ろにずれることもあります。
工程の遅れはそのまま入金の遅れにつながり、立て替え期間が当初の見込みより長引くリスクを常に抱えていると考えておくべきです。

資材の最小発注数量が大きい

容器、キャップ、化粧箱、ラベルなどの資材は、仕入先ごとに最小発注数量が決まっています。
1ロットあたりの生産数が少なくても、資材は数千個、数万個単位で発注しなければならないことがあります。
とくにオリジナルの容器や印刷物は、自社で在庫を抱える前提で先払いを求められることも多く、受注額に対して先に出ていくお金の割合が高くなりやすいのがOEM事業の特徴です。

受注が増えるほど資金が不足する

売上が伸びているにもかかわらず資金が足りなくなる、いわゆる黒字でも資金が回らない状態は、OEM事業者によく見られます。
新規の大口案件や、ヒット商品の追加生産の依頼が重なると、立て替える金額が一気に膨らみます。
せっかくの受注を資金不足で断らざるを得ないという事態は、取引先との関係を考えても避けたいところです。
OEMでは一度断った委託元が別の製造先に切り替え、そのまま戻ってこないことも少なくありません。
資金の問題が、そのまま営業上の機会損失になってしまうのです。

ファクタリングでできること・できないこと

対象は確定した売掛債権

ファクタリングは、すでに発生している売掛債権を売却して資金化する取引です。
融資ではないため、担保や保証人は原則として不要で、評価の中心は売掛先である委託元の信用力になります。
一方で、まだ納品していない、請求できる状態にない取引は、原則として通常のファクタリングの対象になりません。
生産前の資金に直接充てられるわけではない、という点をまず押さえておく必要があります。
また、ファクタリングは売掛債権の売買であり、貸金業法第2条の貸付けには該当しません。
借入れではないため返済という概念はなく、決算書上の負債も増えないという特徴があります。

「前のロットの債権」で「次のロット」を回す

それでもファクタリングがOEM事業者に有効なのは、納品済みで入金待ちになっている債権を早期に資金化できるからです。
たとえば9月に納品した分の入金が12月末だとすると、この債権を10月に資金化すれば、その資金で次のロットの原料と資材を仕入れられます。
入金待ちの債権を、次の生産の原資に置き換えるという考え方が、OEM事業におけるファクタリング活用の基本です。

生産前資金を確保する3つの方法

方法1 納品済み債権を資金化する

最も一般的なのが、納品と請求が済んだ売掛債権を2社間または3社間で売却する方法です。
委託元が大手のブランド企業や通販事業者であれば、信用力が高く評価され、条件も比較的良くなります。
手数料の目安は2社間で10〜30%程度、3社間で1〜9%程度です。
委託元に知られたくない場合は2社間、手数料を抑えたい場合は3社間というように、取引先との関係を踏まえて選びましょう。
審査では、委託元との基本契約書、発注書、納品書、検収書、請求書といった一連の書類がそろっているかが確認されます。
書類の日付や金額に食い違いがあると審査に時間がかかるため、日頃から取引ごとに書類をまとめておくと、急ぎのときにもスムーズに申し込めます。

方法2 注文書を活用するタイプのファクタリング

ファクタリング会社の中には、納品前でも正式な注文書や発注書をもとに資金化を検討する、いわゆる注文書ファクタリングを扱うところがあります。
発注元の信用力が高く、発注内容が確定していることが条件になるのが一般的です。
ただし、取り扱う会社は限られ、納品後の債権に比べて手数料が高めに設定される傾向があります。
納品できなかった場合の扱いも含めて、契約内容を慎重に確認してください。
とくにOEMでは、試作品の承認が遅れる、原料の入荷が遅れるといった理由で納期が変わることがあるため、納期変更時の取り決めが契約書に明記されているかは必ず確認しておきたい項目です。

方法3 委託元との条件交渉と組み合わせる

ファクタリングだけに頼らず、委託元との取引条件を見直すことも重要です。
初回ロットや大口案件では、発注時に一部を前受金として受け取る、資材費だけ先に請求できるよう分割請求の取り決めをする、といった交渉が考えられます。
前受金の交渉とファクタリングを組み合わせることで、手数料の負担を抑えながら必要な資金を確保できます。

具体的なシミュレーション

1ロット600万円の案件の場合

ある雑貨OEM事業者が、委託元から600万円のロットを受注したとします。
原料と資材の仕入れに250万円、製造にかかる人件費などに150万円が必要で、納品は2か月後、入金はその翌々月末という条件です。
手元資金は200万円しかなく、このままでは生産に着手できません。

そこで、前月に納品済みで入金待ちとなっている別の委託元向けの債権500万円を、3社間ファクタリングで資金化します。
手数料を5%とすると25万円のコストで、475万円を受け取れます。
これで原料と資材の仕入れ、製造費用をまかない、600万円の案件を受けることができます。
手数料25万円に対して、案件の粗利が十分に大きいかを事前に計算しておくことが、利用判断のポイントです。

資金繰り表に反映させる

ファクタリングを利用すると、本来入金されるはずだった500万円はファクタリング会社への支払いに充てられるため、その月の入金予定からは消えます。
3社間であれば委託元から直接ファクタリング会社に支払われ、2社間であればいったん自社で受け取って送金します。
いずれの場合も、資金繰り表を作り直し、次の資金不足がいつ来るかを確認しておくことが欠かせません。
この事業者の場合、600万円の案件の入金は約4か月後です。
その間に別の案件の仕入れが重なれば、再び資金が不足する可能性があります。
どの債権をいつ資金化するかを、受注計画と並べて前もって決めておくことで、場当たり的な利用を避け、手数料の総額もコントロールしやすくなります。

OEM事業者が注意すべきポイント

委託元との契約条項を確認する

OEM取引の基本契約書には、債権の譲渡を制限する条項が含まれていることがあります。
民法第466条により、譲渡制限の特約があっても債権の譲渡自体は有効とされていますが、委託元との信頼関係を損なわないよう、3社間を選ぶ場合は事前の相談が望ましいでしょう。
2社間を選ぶ場合も、契約上の義務に違反していないかを確認しておく必要があります。

返品や検品不合格のリスク

化粧品や雑貨では、検品での不合格や、品質問題による返品が起こり得ます。
売却した債権の対象となる納品分に返品が発生すると、請求額が減額され、ファクタリング会社との精算が必要になる場合があります。
検品が完了し、請求額が確定した債権を選んで売却することで、このリスクを小さくできます。
複数の納品分がある場合は、過去に返品や減額の実績がない委託元の債権を優先するのも有効な考え方です。
検品基準や返品条件を委託元とあらかじめ書面で取り決めておくことは、ファクタリングの利用にかかわらず、OEM事業の安定経営に欠かせない備えといえます。

利用を常態化させない

OEM事業は受注が季節や委託元の販売計画に左右されやすく、ファクタリングを毎月の資金繰りに組み込むと手数料負担が積み重なります。
繁忙期や大口案件の立ち上げ時に限定して使うと決めておき、平時は銀行融資や委託元との条件交渉で資金繰りを整えるのが理想的です。
受注実績が積み上がれば、金融機関からの評価も高まり、より低コストの調達手段を選べるようになります。
委託元ごとの受注額と入金サイトを一覧にしておけば、どの取引が資金を圧迫しているのかが見え、条件交渉の優先順位もつけやすくなります。

まとめ

化粧品・雑貨のOEM製造は、受注から入金までが長く、資材の最小発注数量も大きいため、受注が増えるほど資金が不足しやすい業態です。
ファクタリングは確定した売掛債権を売却する取引なので、生産前の取引そのものを資金化できるわけではありませんが、納品済みで入金待ちの債権を早期に資金化し、次のロットの原料や資材の仕入れに充てることは可能です。
注文書を活用するタイプのサービスや、委託元への前受金の交渉と組み合わせれば、選択肢はさらに広がります。
利用する際は、委託元との契約条項、返品や検品のリスク、手数料と粗利のバランスを確認し、繁忙期や大口案件の立ち上げ時に限定して活用しましょう。

【参考法令】民法第466条(債権の譲渡性・譲渡制限の意思表示)/貸金業法第2条(定義)

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