小さな飲食店を営業している、いわゆる居酒屋のオヤジです。
最近はどうも客足が伸び悩んで来ていて、こういう時に昔ながらの新聞広告や地域のチラシというのではあまり効果が期待できないような時代になってしまいました。
本当はあの時、そのままお客さんが少なくても商売をしていた方がよかったのでしょうが…あの時の私はどうしても焦ってしまい、何とかして集客する方法を考えていました。
よくテレビの取材などが入ると常連のお客様がお店に居づらくなってしまって、店がやがて潰れるという話を聞くことがあります。
あれは私からしたら贅沢な話です。
最大瞬間風速でも少し風が吹いてくれれば、まだ色々と考えようはありますし、ご常連様にはご常連様で色々と説明の仕方もありますし、ブームが去る時には舵の取り方というのもそれこそあるわけです。
とにかく何かの間違いでアポなし取材旅でも入ってくれないかなぁと思っていた矢先に、アポなし取材のタレントさんではありませんでしたが、それなりに名前の知れている広告会社の下請け企業の営業マンさんがいらっしゃいました。
私でも名前を知っている所ですから、それなりにテレビのCMなどでも有名な広告企業でした。そこの下請けの営業マンと言っているくらいです、怪しいことは何もないだろうと話を聞いてみたところ何かWebで集客をする方法があるということでした。
当時私はパソコンにあまり詳しくありませんでしたが、家内が昔からデザイナーの仕事をしていたこともあり、同席してもらって色々話を聞いてみたところ、それなりに効果がありそうだということでした。
そこで私は一念発起して80万円もの広告費を支払って、再起をかけた戦いに挑みました。というより、私「は」挑んだつもりでした。
それから一週間。
全く営業マンからの音沙汰がありません。入金して2週間も連絡が取れないとなるとさすがに不安になるもので、営業マンに確認を取ってみると別案件で忙しくしているがプロジェクトは動いているので安心してほしいということでした。
私はいつウェブサイトができるのだろうと心待ちにしていましたが、それから3ヶ月経っても全く連絡がなく、さすがにそろそろ支払った80万円のこともありますし営業マンを呼び出すことにしました。
すると既にその営業マンは退職しており、信じられないことに会社自体もほとんど稼働していないということでした。
つまり私はいわゆる「行き掛けの駄賃」のダシに使われてしまったというわけです。契約書についてもあとからわかったことですが、いくつかの不備がありクーリングオフも当然不能ということで完全に騙されたような形でした。
80万円の資金は色々な生活費の支払いや仕入費用の支払いに消えるはずの費用でした。
3ヶ月もあれば十分に元が取れるという説明でしたのでどうしようもありません。店をせっかく盛り立ててきたのにこんなところで手放さなければならないのか…しかもその原因が店主である私にあるとなってしまうと、もうプライドも何もズタボロです。
私は家内に泣いて謝りなんとか資金繰りをする方法がないかと相談しましたが、私も開業の時に大きな借金をしてしまい、家内も連帯保証人の身。そのような余力は全くありませんでしたし、小さな店ですから売却したところで大した金額にもならないということがわかりました。
そこで困り果てていたところ、インターネットに詳しい息子が「最近は自営業者向けにファクタリングという資金調達方法がある」ということを教えてくれたんです。
普段であれば息子の言うことなど一切聞きませんし、分かり合おうもしていなかったので、普段の私であれば怒鳴り散らして息子を遠ざけたことでしょう。
しかし心底弱りきっていた私は、息子の話に耳を傾けてみました。すると、どうやら既に発行済みの請求書がある売掛債権を現金で即日買い取ってもらうことができるサービスらしい、ということが分かりました。
しかしそんなことが分かったところで、私の業種は飲食業。どうしようもありませんでした。
なぜなら売掛債権なんてないからです。全て現金商売ですから、そんな私の心を見透かしたかのように息子が一言。
「親父は俺のことを全く理解していないみたいだけど、俺だって母さんに習ってデザイナーとして個人事業をやっていたんだ」
「今すぐに貸してやれる現金はないけど、代わりに発行済みの請求書なら手元にあるから、俺がファクタリングに申し込んでみるよ。もしこれでファクタリングに成功して資金が手に入ったら、もう一度店をやり直そう。今度は俺もデザイナーだったり営業担当で頑張ってみるからさ。」
とのこと。
私は何で馬鹿な父親だったんだろうと思いましたが、この時ばかりは息子に頼らざるを得ませんでした。
確かその時息子が使っていたのは、ファクタリングの会社さんへ直接連絡を取る方法ではなく、ファクタリングの会社に対して一括して見積もりを取ることができるサービスでした。
この方法によって息子は効率よくファクタリングに応じてくれそうな業者さんの中から特に条件の良いところを見つけ出し、直接交渉に当たっていたようでした。
この辺りは現代っ子だなという感じがしましたが、これも時代のなせる業なのでしょう。
とにかく私達昭和の世代には考えられないほど、一括見積もりという方法が成熟しているということはよくわかりました。その翌日には息子はファクタリングの契約を無事に済ませて私に現金を手渡してくれたのです。
この瞬間に私は息子のことを認めざるを得ませんでした。と言うより息子に心からの感謝と共に、今まで本当に軽く見ていて申し訳なかったという思いが湧いてきました。
今では息子が私の店のWeb担当をしてくれるようになり、集客も自分の方法で少しずつお客様を増やせるようになってきました。飲食業と言う水物商売ですが、今後も何とか家族みんなでやっていけそうです。
あの時ファクタリング会社とつなげてくれたファクタリング一括見積もりサービスの会社の方には、感謝してもしきれません。
どのように連絡を取って良いかも分かりませんし、息子もどのサイトを使ったのかはよく覚えていないということでしたが、この場を借りてお礼を申し上げます。ありがとうございました。