父親の代から仕事を続けること28年。
従業員25人、年商3億円を突破する、ある一定の規模の会社を経営しています。浮き沈みが特に激しいといわれる業界である広告業で、28年もやってこられたのはひとえにクライアント様、従業員に恵まれたおかげだと思っています。
そして、私としては小さい頃から慣れ親しんでいる古株のスタッフなんかもおり、こういったスタッフに日々支えられながら2代目社長をやっているような状況でした。
しかし残酷にも時の流れというのは人を変えるものでして、今回一人の従業員が私の会社に影を落としたのです。
きっかけは会社の新年会でした。弊社では毎年、とある管理職の従業員が取り仕切って新年会を行っているのですが、この年の新年会はどうやら、2次会や3次会の様子がおかしかったようなのです。
私は1次会で毎年帰宅をして、後は社長抜きで従業員達に好きに飲み食いしてもらうというのが先代からの慣わしなのですが、後日従業員から聞いてみると、幹事をしていた件の管理職が、例年にはないほどに泥酔していたというのです。
もともとこの男は大変酒に強く、いわゆる酒席での営業や、商談の際に酒が出てきた時も率先して切り込んでいくような頼りがいのある人物でした。コーラしか飲めない私も何度助けられたかわかりません。
ところが、ここ数年、どうやら酒に急激に弱くなってしまったようで、寄る年波のせいもあるのでしょうか、酒の席での失敗をすることが増えてきました。
初めのうちは今ご紹介したような会社の新年会や忘年会など、いわゆる身内の飲み会の席で失敗することが多かったのですが、どうやら、私の目の届かない所で毎晩飲み歩くようになり酒量も増えてきているようだとの報告を受けるようになりました。
ここまでは良かったのです。まだ私が指導していれば良かったのですから。
しかし、その男は一線を越えてしまいます。
会社に、全く見知らぬスナックやパブなどから請求書が届くようになったのです。電話して確認をしてみると、どうやらその男が飲み屋さんを飲み歩いて、会社の名前を出して「ツケ」にしているようだったのです。さすがに私としてもこれを容認することはできず、社長室に呼び出して、厳しく問いただしました。
するとその男は涙を流して「どうしてもアルコールが抜けきらない体になってしまい、必ず断酒するので、どうか穏便に済ませていただきたい」と泣きついてきたのです。
親の代から会社を助けてくれているこの男を「むげ」にすることもできず、私はポケットマネーでこっそりとその請求を処理してこの一件は終わらせました。
その3ヶ月後。
いわゆるアル中になってしまったのでしょうか、その男は会社を去りました。というより、ある日突然出社しないようになってしまい、そこから消息がわからなくなってしまいました。
会社としても惜しい人材をなくしてしまった、あの時強く病院に行くなど本人と一緒に治療を進めていればと自分を責めるばかりでしたが、そうもいってられないことになりました。
なんと、様々な歓楽街のスナックやキャバクラなどから数百万円単位の飲み代の請求が回ってきたのです。
信じられないことに、私があの日こっそりと処理をしてから、また様々なところで飲食を繰り返してその度に会社の名前や名刺を出し、会社払いにしていたというのです。
とはいうもののもうすでに連絡が取れないその本人に請求をするのは難しいもので、役員会でも会議をいたしましたが、会社の方で支払いをすることになりました。
というのも、会社としては無視をすればよかったのでしょうが、関係者のどこに弊社のクライアントやお取引先様がいるかもわからず、また弊社の名前を背負った人間がしでかした事の責任を取らなければ、道義的に問題があるという結論に至ったわけです。
しかしその金額たるや数百万円単位ということで、おいそれと内部留保から出すには少々問題のある金額でした。また時期的にも会社のプールが心許ない状況で、このような段階において、支払いを完璧に履行するためには、何かしらの資金調達をする必要がありました。とはいえ身内の恥で金融機関に事情を説明するわけにもいかず、ワケも聞かずに使途は自由で、さらに帳簿上借入にもならない、そんな都合のよい資金調達の方法を探す必要がありました。
探してみたところ、ありました。ファクタリングという資金調達方法です。手形割引に近いシステムでしたが、現代版にアレンジされたこの手法は、特に手形割引のようなリスクを負うことなく、気軽に売掛債権をすぐに現金化することができるプログラムであることがわかりました。
そして様々な業者が昨今ファクタリング事業を行っており、見積もりは、相見積もりをとるのが一番良いということも分かりました。丁寧にファクタリングの申し込み方などに関して説明を行っているブログがあり、そちらを参考にしたところ、ファクタリングは一括査定サービスを使うのが良いということでした。そこでこの一括査定サービスを使ってみたのですが、なるほど、一括査定を行うことにより、こうも簡単に条件の良い業者と巡り会えるとは思ってもみませんでした。
平均的な買取金額よりも、かなり高い金額で売掛債権を買い取ってもらうことができ、全ての飲食代を処理することができました。
従業員の不始末は会社の責任です。会社の責任は、そのトップである社長の責任です。社長として責任を取るには、こういった資金調達なども行わなくてはなりませんが、今回私の精神的支柱となってくれた存在はファクタリングに他なりませんでした。