ファクタリングの利用が増加している理由

目まぐるしく情勢が変わり、物価の変動も激しい中、迅速な資金調達手段の一角を担う新たな選択肢として認知されつつあるファクタリング。

法改正によってさらに取り入れやすくなり、国の後押しも受けて日本でも日々利用数は増えています。
なぜ今、ファクタリングの需要が高まっているのか?

今記事ではファクタリングの利用が増加している理由について解説していきます。

ファクタリングの利用数は年々増加している?

ファクタリングの利用数は世界的に見ても増加傾向です。
日本ではどうかというと、ファクタリングが日本に登場したばかりの頃は、手形割引での取引が主流でしたが、現在では手形割引よりも手間やコストがかからないとしてファクタリングへの切り替えが進んでいます。

世界では1970年頃から既に増加傾向

ファクタリングは、諸説ありますが13~15世紀頃にイギリスとフランスで発祥したと言われています。しかしその原型は紀元前までさかのぼることができるという説も。
その後17世紀ごろからアメリカにも広まり、19世紀には本格的に普及し始めました。

20世紀後半には日本にもやってきましたが中々広まることはなく、近年のインターネットの活発化により大きく需要が高まり、ファクタリングを生業とする企業、利用する企業ともに増加することとなったのです。

日本でも需要拡大中

海外ではかなり以前から需要が高く、一般的な資金調達手段のひとつに数えられているファクタリングでしたが、日本国内ではこれまでそれほど認知されていませんでした。

ですが2005年、債権譲渡登記制度の改正により債権譲渡のハードルが下がったことで徐々に利用者が増え、2020年の債権法改正で債権譲渡禁止特約付きの債権も譲渡が可能になり、現在はさらに増加スピードが加速しています。

ファクタリングの需要が高まる理由

なぜ、ファクタリグの需要はこれほど高まっているのでしょうか?
4つの理由が考えられます。

国が後押し

1つには、中小企業のファクタリング利用を国が後押しをしていることがあげられます。
中小企業庁は、売掛債権の利用を促進するpdfを出しています。

中小企業庁 売掛債権の利用促進について
中小企業庁 中小企業金融の多様化と円滑化に向けた具体的スキーム

このように、ファクタリングは主に中小企業の資金繰りの多様化を目指す施策の一環として国から促進されているといういわばお墨付きを得たことで、これまで利用をためらっていた事業経営者が安心してファクタリングを選ぶようになったことが、近年の需要増の一因です。

審査が簡単で買い戻しリスクがない

ファクタリングの利用が増加する理由の大部分を占めているのが、融資や他の資金調達手段と比べて審査がすこぶる通りやすいということと、弁済の義務がないということでしょう。

銀行などの融資は審査に通りさえすれば多額の資金を手に入れられますが、相当の信用力を求められるため中小企業にとっては難易度の高い方法で、現状このあたりの取りこぼしを拾うためにファクタリングが推奨されているとも言えます。

手形割引の衰退

もともと中小企業の資金調達手段としては手形割引が長く利用されてきました。
ただ、手形割引はファクタリングと違い、利用者側に買い戻しのリスクが常にありました。

手形割引に利用した売掛債権が、売掛先の倒産などで回収不能になると、利用者は不良債権となったそれを買い戻さなくてはいけません。

バブル崩壊後、いくつもの売掛債権が回収不能となり、手形割引で資金調達をしていた企業は買い戻しを余儀なくされそのまま倒産するケースが相次ぎ、手形割引の利用が減少する要因となりました。

ファクタリングは債権譲渡なので手形割引のような買い戻しリスクがありません。
このメリットは、とりわけ体力の低い中小企業にとって恩恵が大きく、手形割引からファクタリングへの切り替えが大幅に促進されたのです。

負債にカウントされない

他の資金調達手段の多くは、負債として貸借対照表(バランスシート)に記録されます。
ですがファクタリングはあくまで流動資産の現金化にあたるため、負債としてカウントされません。
流動資産が整理されたということで逆に評価されるケースもあります。

建設・医療介護系など相性の良い業種で人気

売掛債権の支払サイトが長く、その間の出費が経営を圧迫しがちな建設業などでファクタリングが認知され人気が高まっているのも需要増に拍車をかけています。
建設業は公共事業なども多く、売掛先が安定していてファクタリング利用に理解を得やすいというメリットがあります。

医療介護業界では診察報酬など公的機関が請求先になるため倒産の恐れがなく、ファクタリング会社にとって回収リスクがほとんどありません。
このため手数料を安く抑えられ、この業種を専門に取り扱う医療ファクタリング、介護ファクタリングというジャンルが存在するほど。

ファクタリング会社が増えるワケ

需要があれば供給が増えるのは当たり前ですが、ファクタリング会社の数が急激に増えているのには他にもいくつか理由があり、それが問題のタネにもなっています。

登録が必要ない

銀行であれ、ノンバンクであれ、消費者金融であれ、貸金業を営む業者は免許・認可・登録が必要になります。

貸金業者として開業するためには幾つかの登録要件を満たさなくてはいけません。
主な要件は下記のとおり。

貸金業務取扱主任者(国家資格)

営業所又は事務所で貸金業の業務に従事する者の50人に1人以上の人数を置くこと。
貸金業務取扱主任者は常勤の者であること。

純資産額

5,000万円以上(貸金業を営む期間中はこの額を下回らないこと。)

貸付けの業務の従事歴

申請者が法人:員のうちに貸付けの業務に3年以上従事した経験を有する者がいること。
申請者が個人:申請者が貸付けの業務に3年以上従事した経験を有する者がいること。
また、営業所等ごとに貸付けの業務に1年以上従事した者が常勤の役員又は使用人として1人以上在籍していること。

指定信用情報機関

個人向け貸付けや個人を保証人とする場合、指定信用情報機関(JICC、CIC)に加入すること。

出典元:
日本貸金業協会 貸金業を始めるには

何らかの貸金業を開業するためには上記の登録が必須であり、要件の維持も求められます。

一方、ファクタリングは言ってしまえば売買ですから貸金業登録の必要がありません。
ファクタリング業の開業のための認可や登録制度はまだ整っておらず、参入の敷居がそれほど高くありません。

手数料の制限がない

ファクタリングの手数料には、融資などに比べると割高であるにも関わらず、法的な制限がありません。
手数料が高くなる原因は、ファクタリング会社側に常に回収リスクが存在するからです。
基本的に、審査が厳しく担保や保証人などによって回収リスクが低くできればそれだけ手数料は安くなり、審査が易しく回収リスクを下げにくいサービスほど手数料は高くなります。

法的な制限がありませんから、手数料の設定はファクタリング会社に一任されます。
おおよその相場はありますが、それを大幅に超える料金設定にしたからといって違法というわけではないのです。

悪徳業者も紛れ込んでいる

認可や登録が必要なく、手数料の制限もないため、ファクタリング会社の中には悪質な業者が紛れ込んでいることもあります。

金融庁からの注意喚起も

特に懸念されているのが、ファクタリングを装って実質的には違法な貸付を行うヤミ金業者の偽装ファクタリング、労働者個人の給与(賃金債権)を買い取ると謳う給与ファクタリングです。

これらの違法ファクタリングには、金融庁から以下のような注意喚起が出されています。

偽装ファクタリング

近時、ファクタリングを装った高金利の貸付けを行うヤミ金融業者の存在が確認されています。また、ファクタリングとして行われる取引であっても、経済的に貸付けと同様の機能を有していると思われるようなものは、貸金業に該当するおそれがあります。

給与ファクタリング

「給与ファクタリング」などと称して、業として、個人(労働者)が使用者に対して有する賃金債権を買い取って金銭を交付し、当該個人を通じて当該債権に係る資金の回収を行うことは、貸金業に該当します。
 
貸金業登録を受けていないヤミ金融業者により、年率換算すると数百~千数百%になる手数料を支払わされたり、大声での恫喝や勤務先への連絡といった私生活の平穏を害するような悪質な取立ての被害を受けたりする危険性があります。

出典元:
金融庁 ファクタリングの利用に関する注意喚起

悪徳業者を避けるコツ

悪徳業者を避けるため、契約書はよく確認し、以下に該当する契約を安易に結ばないようにしましょう。

契約書が債権譲渡契約ではない

違法ファクタリングの実態は貸付ですが、悪質な業者は後から言い逃れできるようしれっと金銭消費貸借の契約書にしていることがあります。
契約書のタイトルが“債権譲渡契約”になっているか、必ず確認しましょう。

償還請求権有りの契約

売掛債権の回収が不可能になった場合に、利用者に支払を請求できる権利を償還請求権といい、償還請求権有の契約をウィズリコースともいいます。
ウィズリコースのファクタリング契約は貸付と判断されるため、契約にはそのファクタリング会社が貸金業登録をしている必要があります。

ヤミ金業者は当然これに登録できませんので、不安を感じたら登録の有無を確認しましょう。
金融庁の登録貸金業者情報検索サービスで調べることができます。

金融庁 登録貸金業者情報検索サービス

審査無し・手数料が安すぎるなどの契約

ファクタリングがどんなに審査が簡単といっても、全く審査しないということはあり得ません。
同様に、一般的なファクタリングの相場からあまりにもかけ離れた手数料を提示された場合も警戒してください。高額すぎるのも避けたいですが、安すぎる場合も後から契約書を書き換えられていた、追加で請求されたケースなどがあります。

ジャンプ・分割払いの提案

2社間ファクタリングでは期日に売掛先から振り込まれた売掛金をファクタリング会社に受け渡す必要があります。この支払の先延ばしや、分割での引き渡しを提案されたらどんなに善意に見えても断りましょう。

ジャンプや分割払いの利用は債権譲渡でなく貸付と判断され、実際に貸金業登録のないファクタリング会社がこれを行って違法の判決が出たケースも。

まとめ

ファクタリングの利用が増加している理由には、法の後押しの他にも相性のいい業界での認知が広まったことなどがあげられますが、残念なことに違法業者の乱立も影響しているようです。怪しいと感じたら、その場で契約せずに一旦持ち帰るなどして速やかに離れ、公的機関に相談しましょう。

幸い、真面目なファクタリング会社の多くは積極的にファクタリングに関する情報を公開しています。契約前によく調べて比較するなどして、安全な利用を心がけましょう。

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