帝国データバンクから調査依頼を受けたことで、困惑している経営者の方もいらっしゃるかもしれません。
帝国データバンクの信用調査で高い評点を得られれば、金融機関からの信頼を得やすくなり、資金調達をしやすくなるメリットがあります。
しかし「調査で何をすれば良いか分からない」「何となく断りたい」など、あまり気持ちが前向きになれずに、判断に迷ってしまうのではないでしょうか。
当記事では帝国データバンクの信用調査の概要、信用調査で高い評点を取るポイントや注意点について解説していきます。
帝国データバンクの信用調査とは
信用調査とは、企業と企業が取引する際に、取引相手のことを知るために行う調査です。
例えばA社が「B社と新規取引をしたいけど、支払い能力があるか心配」と考えた時に、直接あれこれを聞くのは難しいところです。そこで帝国データバンクがA社の代わりに情報収集や信用調査を行い、双方の取引がスムーズに進む役割を担います。
信用調査で調べられるような主な項目は以下の通りです。
- 会社の概要
- 経営者の情報
- 扱っている商品や取引先
- 金融取引状況
- 業績推移
- 決算内容
- 不動産情報
- 今後の事業計画
帝国データバンクの信用調査報告書は、15のカテゴリーから100以上の項目から構成されており、精度の高さが伺えます。
(参考:帝国データバンクの信用調査報告書とは|調査報告書から学ぶビジネス教養)
帝国データバンクが信用調査を行う理由
帝国データバンクは、企業活動に役立つ情報を提供している会社です。その情報を求めている金融機関や全国の中小・大企業のために信用調査を行い、円滑な取引の推進に貢献している役割を果たしています。
取引先となる企業の情報を調査する場合、自社で調べられる範囲には限界があり、情報の正確性を見極めるのも簡単ではありません。そのため、高度な知見を有する信用調査会社に依頼しようという流れになるのです。
日本国内の大手信用調査会社は、(株)東京商工リサーチと(株)帝国データバンクです。どちらも創業100年を超える格式高い企業であり、長年の実績に基づく信頼感に基づいて運営されています。
※信用調査は、収集した情報を閲覧してくれる企業のために実施されています。企業の情報を知りたいどこかの会社の代わりに、帝国データバンクが調査を行っているのです。帝国データバンクが単なるデータ収集に終始していると思い込むのは、よくある誤解だといえます。
信用調査を通して何を知りたいのか
突然に信用調査の依頼が来ることで、当社のどのような情報が知りたいのだろうと率直に感じる経営者の方も多いのではないでしょうか。
信用調査を行う会社は「取引先(となる企業)が安心して取引ができる状態なのか」を確認したいという目的があります。
信用調査を行う会社が知りたいことは、具体的には以下の通りです。
- 受け払いの期日や納期を守れるか
- 求めている製品やサービスの基準を満たしているか
- 経営状況は財務的に健全か
- 経営者の人柄は優れているか
やはり真剣に取引を行いたいと考えている会社ほど、信用調査を通して事前に立ち回りを行う傾向にあります。
帝国データバンクの信用調査の流れ
帝国データバンクの信用調査の流れは以下の通りです。
- 帝国データバンクの調査担当者が自社を訪問する
- 経営者からヒアリングを行う
- 必要な書類などの開示を行う
- 訪問調査の終了後、信用調査報告書が作成される
基本的には調査担当者の流れに沿う形で問題ありません。回答は任意なので、答えたくない点については回答を拒否しても構いません。
帝国データバンクの信用調査で高評価を得るためには
帝国データバンクは企業を訪問した後に、評点と呼ばれるスコア付けを行います。
【評点とは】
帝国データバンクが企業を100点満点で評価した点数で、企業が健全な経営活動を行っているか、支払能力があるか、安全な取引ができるかを第三者機関として評価したものです。
(参考:評点とは (株)帝国データバンク[TDB])
評点を基準に取引を実施するか判断する企業も多いことから、高い評点を取ることを目指したいところです。ではどのように高い評点を得ることができるのでしょうか。
評価項目について把握する
評点の評価項目は、帝国データバンクにより公表されています。
- 業歴:企業運営の継続性 ※長いほど高評価
- 資本構成:財務の安定性
- 規模:売上高・従業員数
- 損益:決算書などから客観的に評価
- 資金現況:調査時点での収益性など
- 経営者:個人の資産背景や人物像
- 企業活力:上記項目以外での調査担当者の評価
健全な会社経営においては、どの項目も重要な内容であり、抑えておきたい点だといえるでしょう。
決算書を提出する
決算書を提出することで、損益や資金現況において評点を見込めることができるでしょう。もし決算書を提出しなければ、減点を受けることは免れられません。
もし業績が芳しくない場合でも、決算書以外の書類を提出することで、評点に好影響を与えることができるかもしれません。
- 事業計画書
- 資金繰り表
- 経営改善計画書
調査員から提出を求められなかったとしても、提出することで前向きな印象を与えられることから、決算書以外の書類も準備しておくことが好ましいです。
調査の当日に向けてシミュレーションする
評点には「経営者」の項目が存在します。そのため会社の財務状況といった数字面だけでなく、経営者の人柄といった内容まで調査されます。
日常的に説明することについて訓練することで、経営者としての厚みを醸し出せるようになるはずです。言葉として淀みなく説明するためにも、調査に向けてシミュレーションを怠らないようにしましょう。
信用調査は拒否できる?拒否するデメリットとは?
信用調査と聞いて、協力するか拒否するかで判断に迷う方もいるのではないでしょうか。信用調査の目的が分からなかったり、面倒くさいと感じたりするなど、拒否したくなる理由は様々でしょう。
結論として信用調査はあくまで任意なので、回答は義務ではありません。回答を拒否することも可能です。
しかし信用調査の回答を拒否することで生じるデメリットもいくつか存在します。
失注によるダメージを受ける可能性がある
信用調査の回答を拒否することで、失注によるダメージを受けることが考えられます。長期的に見て利益の逸失にもつながりかねません。
特に大手の企業では取引先の与信を重視する傾向にあります。「信用調査を拒否するような会社とは安心して取引が出来ない」という意思決定により、失注によるダメージが生じてしまうのです。
銀行からの融資を受けにくくなる
銀行からの融資を受けにくくなることも、信用調査の回答を拒否することのデメリットです。
銀行は融資の判断材料として、信用調査の情報を精査することがあります。やはり情報に乏しい会社となれば、必然的に審査が厳しくなることは避けられないでしょう。
ネガティブなイメージを抱かせてしまう
信用調査を拒否した場合、「あの会社は財務状況が芳しくないから情報を公開しないのでは?」というネガティブなイメージを抱かせてしまいます。
もし経営が軌道に乗っている会社であれば、むしろ信用調査を通して自社の健全性をアピールするチャンスとなるはずです。
しかし業績が悪い会社では、情報を公開しないためにも信用調査を拒否する傾向が見受けられます。他社と比較された場合にも、やはり情報が乏しい会社というのは信頼されにくくなってしまいます。
企業の担当者が信用調査で注意したい3つのポイント
帝国データバンクの信用調査において、企業の担当者が注意したいポイントは以下の通りです。
priority
本当に帝国データバンクの職員かどうか確認する
priority
正確な数値やデータを記載する
priority
銀行融資に強い専門家を同席させる
それぞれ解説していきます。
本当に帝国データバンクの職員かどうか確認する
帝国データバンクの社員を装って電話口で調査を行おうとする業者や、ドメイン(@tdb-net.com)を装って迷惑メールが不特定多数に送付されたという事例が確認されています。
もし相手を不審に思う場合は、帝国データバンクの営業所に電話で確認するようにしましょう。全国事業所に問い合わせることで、その社員が実際に在籍しているか照合してみてください。
(参考:全国事業所一覧 | (株)帝国データバンク)
正確な数値やデータを記載する
決算書のような書類は単に準備するだけでなく、正確な数値やデータを記載するようにしましょう。
連続する数字が含まれる場合の転記ミスや、形の似ている数字を見間違える認識ミスなど、数字の間違いは思わぬ形で発生しがちです。百万円単位のPLに千円単位の金額を記入するようなミスも散見されます。
面倒だと感じられるかもしれませんが、会計ソフトなどを活用しながら、改めて提出予定の書類の数字をチェックしてみてください。
第三者に会社説明の依頼を検討する
会社の状況を上手く説明するために、第三者を招いて同席してもらうという手段もあります。
候補としては顧問税理士や弁護士、経営コンサルティングの専門家などが挙げられます。説明する能力に長けているため、高い評点を獲得するには心強い存在です。
ただし調査員に事前に事情を伝えておくか、会社の関係者として自然に同席させるなどの配慮が必要となります。
まとめ
信用調査の回答は任意であり、強制ではありません。ただし「会社として今後は取引先を増やしたい」、「積極的に資金調達もしていきたい」と考えているなら、信用調査に回答することが望ましいです。
帝国データバンクの信用調査で高い評点を得ることができれば、取引先の企業にとっては心強い判断材料になります。失注を防ぐことにもつながるので、中長期的な売上にも影響することでしょう。
信用調査は今後の事業計画や自社の財務状況の見直しを図る機会にもなるため、ぜひ前向きに対応してみてください。