ファクタリングと貸金業、一体どこが違うの?法的根拠から見える大きな違い

資金調達の手段を探したとき、銀行や貸金業者などからお金を借りる方法は誰でも真っ先に考えつきますが、最近はそこにファクタリングという選択肢も入ってきました。

貸金業というのは、消費者金融やクレジットカード会社などから受ける融資全般のサービスのことですね。長く存在するこの業種は法の定義もしっかりと定まっていて規制も多く、細々とした手続きやルールがあります。

一方、比較的新しいサービスであるファクタリングは、銀行などに比べると貸金業に近いイメージをお持ちの方が多そうですがちょっと違います。

ファクタリングは簡単に言ってしまうと、企業が商品を売った後、入金までかかる時間をすっ飛ばしてすぐに現金が欲しい、というような場合に適したサービスです。

後に入金される予定のお金=売掛金を、ファクタリングを取り扱う会社に売る、という売買の契約になるため、“貸金”という言葉には当てはまらないのです。

この記事では、貸金業とファクタリングの違いや、それぞれにどんなルールがあるのか、そしてどちらが事業者や消費者にとって良い選択肢なのかを分かりやすく紹介します。

貸金業とは何か?法的定義と役割の解説

まず、貸金業とは何でしょうか?

お金を貸す仕事、なら銀行も当てはまるのでは? と思いがちですが……実は銀行や、信用金庫、農協などは今回比較する貸金業には含まれません。

銀行には銀行法、信用金庫には信用金庫法、農協には農業協同組合法がそれぞれ適用されています。

貸金業=金銭の貸付またはその媒介を業として行うこと

貸金業法によれば、貸金業は「金銭の貸付け又は金銭の貸借の媒介(手形の割引、売渡担保その他これらに類する方法によつてする金銭の交付又は当該方法によつてする金銭の授受の媒介以下これらを総称して単に「貸付け」という。)を業として行う」と厳密に定義されています。
出典:e-GOV法令検索

「業として行う」とはどういうことかと言いますと、繰り返しかつ継続して行う意思を持って貸付けをすることです。つまり、一度お金を貸して終わりではなく、それを業として継続的に行って利益を得ることが貸金業だということになるわけですね。

国や地方自治体、銀行の貸付は貸金業に含まれない

消費者金融やクレジットカード会社、信販会社が提供するキャッシングやカードローンなどが貸金業に該当する融資サービスです。

ここに、国や自治体が行う貸付や、銀行のカードローンや借入、企業が従業員に対して行う社内貸付(福利厚生の一環である場合が多いです)は含まれません。

貸金業には必ず登録が必要

正規の貸金業者は、必ず国や都道府県に登録されています。貸金業を行うためには登録が必要であり、金融庁に公開されている「登録貸金業者情報検索サービス」から、商号、代表者名や電話番号などで確認できます。

参考:登録貸金業者情報検索サービス

貸金業者には様々な条件がある

登録以外にも貸金業を営むには様々な条件を満たす必要があります。以下にその一部をご紹介しましょう。

  • 営業所または事務所で貸金業の業務に従事する者の50人に1人以上が貸金業務取扱主任者(国家資格)を持ち、且つ常勤であること
  • 純資産額が5000万円以上であり、貸金業を営む期間中はこの額を下回らないこと
  • 指定紛争解決機関との間で手続実施基本契約を締結すること
  • 個人向け貸付けや個人を保証人とする場合、指定信用情報機関(JICC、CIC)に加入すること

この他にも、貸金業法第6条第1項各号に該当しないことなど数多くの要件を満たさないと貸金業者として認められません。

参考:日本貸金業協会 貸金業を始めるには

貸金業の役割

貸金業者は様々な事業形態を持っており、その多様な特色で個人から事業者まで幅広い範囲の資金需要に対応します。以下に業態の一部をご紹介していきます。

消費者向無担保貸金業者

アイフルやアコムなどが有名ですね。プライベートな出費や個人事業主の少額資金需要に利用されています。

消費者向有担保貸金業者、消費者向住宅向貸金業者

有名なところでは、「フラット35」は利用されている方も多いのではないでしょうか?
「フラット35」は銀行と提携して扱われる住宅ローンですが、この取次を行う住宅金融支援機構はここに当てはまります。

クレジットカード会社

クレジットカードの会員にキャッシング機能やローンを提供しています。事業者にはビジネスローンを提供することで事業運営をサポートしてくれます。

参考:日本貸金業協会 人々の暮らしや事業活動を支える多様な貸金業者

ファクタリングとは?ビジネス取引での役割と利点

では、ファクタリングは法的にはどのように定義されているのでしょうか?
またその役割と利点は?

こちらも順を追って解説していきたいと思います。

ファクタリングは債権譲渡契約の一種

実はファクタリングには、○○法といったものがまだありません。
それと言うのも、ファクタリングは数ある債権譲渡契約のひとつに過ぎないからです。

ファクタリングとは、factoring=売掛債権買取という意味です。

例えば、ある企業Aが90日後を支払期日として取引先の企業Bに商品を売ります。
ファクタリングを取り扱う会社(銀行を含む金融機関)が、企業Aが持つ「企業Bから支払を受ける権利」を買い取ります。この支払を受ける権利のことを売掛債権といい、ファクタリングはあくまでこの債権を売買する1回限りのやり取りなのです。

もちろん、ファクタリングを主に生業とする会社はこの売買を繰り返し行うわけですが、八百屋さんが毎日色んな野菜や果物を売るのと同じで、購入と支払はその都度1回で終わるため、貸付には該当しないのです。

役割と注意点

ファクタリングは基本的には事業者向けのサービスです。

動く金額が大きく、また支払期日が数ヶ月以上先に設定されることの多い建設業などで特に重宝されていますが、ファクタリング会社によっては少額で対応してくれるところもあるので、事業を運営しているのであれば個人事業主でも利用は可能です。

個人で利用する場合の注意として、給料そのものを売掛債権とすることはできません。
これに関しては金融庁からの注意喚起も出ています。

ヤミ金融を始めとした違法業者が、給与ファクタリングと称し、実態は貸付であるにも関わらず、売掛債権として買い取るかのように見せかける手口が近年増えつつあるのでファクタリング会社を選ぶ際には条件や契約内容をよく確かめましょう。

ビジネスにおけるファクタリングの利点

ファクタリングの明確な利点として最もわかりやすいのは、現金入手までのプロセスの早さ・簡潔さではないでしょうか。

ファクタリング会社は利用者にお金を貸すのではなく、すでに確定している権利を買い取るだけなので、貸付のように返済されるかどうかを心配する必要がありません。これは審査の簡単さに直結します。

利用者は貸金業者から借入をする時のように長く待たされることはありません。
利用者が起業したてであるとか、経営が苦しいだとかはファクタリング契約のための審査にはほとんどの場合、影響がないのです。

この点が貸金業者との大きな違いであり、経営に窮しているときほどファクタリングは選択肢としてピカピカ輝くのです。

ファクタリングの法的根拠と違法業者の闇


近年、その利便性からファクタリングの需要が増え続けていることもあって、先にお話したような違法業者が紛れ込み、実態を偽った貸付行為による事件なども起きています。
ファクタリングの合法性をここで確認してみましょう。

債権譲渡は法律で認められている

何よりもまず、債権譲渡は民法で定められた権利です。

民法第466条
①債権は、譲り渡すことができる。ただし、その性質がこれを許さないときは、この限りでない。
②当事者が債権の譲渡を禁止し、又は制限する旨の意思表示(以下「譲渡制限の意思表示」という。)をしたときであっても、債権の譲渡は、その効力を妨げられない。
③~

と続きますが、②以降は2020年4月1日に改正されたものです。

改正前から債権譲渡自体は認められていましたが、2020年3月以前は「譲渡制限特約」付きの債権は譲渡ができませんでした。つまり、取引先からの売掛金を他に譲渡しない約束をあらかじめしている場合はファクタリングで現金化することはできませんでした。
が、現在はここが改正され、債務者となる企業は売掛債権を活用した資金調達をむしろ積極的に活用できるようになりました。

参考:経済産業省 債権法改正により資金調達が円滑になります(pdf)

違法ファクタリングとなるのはこんなケース

以下は、先にご説明した注意喚起されている代表的な違法ファクタリングです。

給与ファクタリング

違法業者は、給与を労働者が経営者に対して持つ債権であるとして債権譲渡が有効であるかのように誘導しますが、金融庁は個人の給与を債権としファクタリングする行為は貸金業にあたるとしています

ファクタリングではなく貸金業であるなら貸金業登録が必要です。
おかしいと思ったら下記の金融庁の検索サービスで調べると良いでしょう。

参考:登録貸金業者情報検索サービス

偽装ファクタリング

給与ファクタリングもこの一種ですが、貸金業登録のないヤミ金融などの悪徳業者が行う、ファクタリングを装った法外な貸付である可能性が高いものには以下の特徴があります。

  • priority 契約書に売買契約であることが明記されていない
  • priority ファクタリング業者から受け取る金銭(債権の買取代金)が、債権額に比べて著しく低額
  • priority 売却した売掛債権が回収できない場合、売主が債権を買い戻すこととされている
  • priority 手形や小切手などの担保を要求される
  • priority 保証人を要求される

少しでも不安を感じたら金融庁の注意喚起ページ下部に記載されている窓口に相談しましょう。

参考:金融庁 ファクタリングの利用に関する注意喚起

まとめ

ファクタリングと貸金業の違いはおわかりいただけたでしょうか?

細かいところまで法に規制され、企業から個人まで幅広く対応している貸金業と、ビジネスにおける柔軟性と瞬発力は高いけれど違法業者をよく見極める必要のあるファクタリング、状況に合わせて最適な手段を賢く選んでいけると良いですよね。

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