企業経営をしていれば、突然の資金需要に対応しなければならないタイミングはあるものです。
そんなときの特効薬として最近よくファクタリングですが、ファクタリング以外の選択肢が全く無いということは本当にあり得るのでしょうか?
この記事ではファクタリングもそれ以外も含めた緊急時の資金繰り対応策をいろいろ探っていきたいと思います。
資金繰りの緊急対応策:緊急度別
まずは緊急度別の対応策をご紹介します。
審査難易度は最も易しいを★1つ、最も厳しい(銀行融資など)を★5つとしました。
緊急対策なのでここに載っている方法は★2つまでのもののみです。
また、それぞれのメリットとデメリットも一言ずつ載せています。
今日明日にも資金が必要:最短で即日対応が可能な手段
2社間ファクタリング
- 入金:最短数時間~3日程度
- 手数料:売掛債権の8~20%
- 審査難易度:★
メリット:資金調達までのスピードが早い・負債にカウントされない
デメリット:手数料が高い・売掛債権の額面までしか現金化できない
ビジネスローン(ノンバンク)
- 入金:最短即日~2日程度
- 金利:6~18%/年
- 審査難易度:★★
メリット:資金調達までのスピードが早い・融資だが無担保無保証
デメリット:金利が高い・金融機関からの印象が悪い
カードローン
- 入金:最短1時間~2日程度
- 金利:3~18%/年
- 審査難易度:★
メリット:資金調達までのスピードが早い
デメリット:金利が高い・借入限度額が低い(10~500万円)・金融機関からの印象が悪い
概ね2週間以内には資金が必要:最短2~3日から対応が可能な手段
3社間ファクタリング
- 入金:最短5日~2週間程度
- 手数料:売掛債権の1~9%
- 審査難易度:★
メリット:手数料が安い・負債にカウントされない
デメリット:やや入金に時間がかかる・売掛先に知られる
手形割引(銀行・信用金庫)
- 入金:最短2日~1週間程度
- 手数料:2~4.5%
- 審査難易度:★★
メリット:手数料が安い
デメリット:手形が不渡りになった場合、買い戻しの義務がある
売掛債権担保融資
- 入金:最短1週間程度
- 金利:~15%/年
- 審査難易度:★★
メリット:売掛債権だけで融資を受けられる
デメリット:債権が回収不能になった場合、買い戻しの義務がある
スピード資金には2社間ファクタリング・ビジネスローン・カードローン
即日対応が可能なのは2社間ファクタリング・ビジネスローン・カードローンでした。
ではそれぞれのメリットとデメリットをもう少し詳しく見ていきましょう。
ファクタリングのメリット
他の資金調達手段と比べて審査が易しい
審査対象が利用者ではなく売掛先になるため、審査の難易度はとても低めです。
借金があっても利用できる
上と同じ理由から、借金があったり税金の滞納があるなど融資であれば断られるようなケースでもファクタリングの利用は可能です。
申請から入金までの時間がとても短い
ファクタリングの審査に要する時間はとても短く、会社によっては申し込みから入金まで最短数時間で進むことも。
返済・買い戻しがない
手形割引や売掛債権担保融資は、手形あるいは債権が回収不能になった場合利用者が買い戻さなくてはいけませんが、ファクタリングは売却なので売った後の責任は問われません。
負債にカウントされない
融資は貸借対照表(バランスシート)に負債として記録されますが、ファクタリングは流動資産の現金化にあたるので負債が増えません。
むしろ流動資産が整理されることで、評価があがる可能性も。
手数料に節税効果有り
ファクタリングで売掛金から引かれた分の手数料は、そのまま売上債権売却損として計上できます。
ファクタリングのデメリット
2社間ファクタリングは手数料が高い
ファクタリング会社にもよりますが、2社間ファクタリングの手数料は8~20%が相場です。
あまり高いところだと本来入手できるはずだった金額より大幅に減ってしまい、より資金繰りが苦しくなるという本末転倒な事態に陥ってしまいます。
3社間ファクタリングは売掛先に知られてしまう
3社間ファクタリングは、手数料は安いのですが売掛先にも契約してもらう必要があります。
理解を得られる関係性であれば問題はないのですが、場合によっては自社の経営状態に不信感を持たれてしまうケースもあり得ます。
売掛債権の額面までしか資金調達できない
ファクタリングで調達できる金額は売掛債権の額面-手数料なので、ときに必要な金額に達しないこともあるでしょう。
この場合は、複数の売掛債権をまとめて買い取ってくれるファクタリング会社と契約する必要があります。
会社が多すぎて選ぶのが大変
需要の増加に加え未だ法規制がないファクタリングは参入のハードルが低く、巷にはファクタリング会社があふれかえっています。
ですが緊急時に1社1社見比べている余裕はありません。
一括査定サイトなどを上手く活用しましょう。
ビジネスローンのメリット
金融機関の融資の中では比較的審査が易しい
ビジネスローンは銀行系でも通常の融資よりも審査が易しい傾向にあります。
審査対象は他の融資同様、利用者の信用度ですが、ノンバンク系や消費者金融のビジネスローンであれば、より柔軟に対応してくれるでしょう。
実績が少なくても利用できる
上記の理由から、開業したてなどで実績が少ない企業も利用できます。
無担保・無保証で利用できる
不動産を担保にする不動産ビジネスローンや、売掛債権を担保にするケースもありますが、原則無担保・無保証で利用できます。
申請から入金までの時間が短い
ノンバンク系や消費者金融のビジネスローンであれば最短即日で調達することも可能です。
銀行系のビジネスローンでも概ね4日前後で対応してくれます。
借入限度額は高め
ビジネスローンの借入限度額はカードローンに比べると高めに設定されています。
加えてビジネスローンには総量規制が適用されないため、至急高額の資金が必要なケースには向いています。
ビジネスローンのデメリット
金利が高い
通常の融資に比べると金利が高く設定されており、消費者金融>ノンバンク>銀行の順で若干安くなりますが銀行のビジネスローンでも1~14%とかなり開きがあります。
短期間を乗り切るつなぎ資金に留めておくのがおすすめです。
他の金融機関からの評価は下がる
ビジネスローンの履歴は借入として貸借対照表に残ります。
銀行のビジネスローンであればそれほど心配はいりませんが、ノンバンクや消費者金融からの借入履歴が多いと、以降の銀行や公的機関からの審査に悪影響がでてしまいます。
カードローンのメリット
審査が易しい
審査対象は利用者の信用度ですが、ビジネスローンよりもさらに審査が易しい傾向にあります。ブラックリスト入りしていなければほぼ通ると思ってよいでしょう。
個人で利用する場合は使途制限無し
個人でカードローンを利用する分には、使い途に制限がありません。
必要な資金が少額なら、一番手っ取り早い方法かもしれません。
無担保・無保証で利用できる
こちらもビジネスローン同様、無担保・無保証で利用ができます。
申請から入金までの時間がとても短い
ノンバンクや消費者金融のカードローンなら最短1時間で入金されるケースもあります。
一定期間利息無しなど独自サービスがある
30日間無利息などは聞き覚えがあるのではないでしょうか?
このように短期で返済できる場合は利息無しで利用することも可能です。
カードローンのデメリット
金利が高い
他の融資に比べると金利が高く設定されており、その割合も3~18%とかなり開きがあります。
ビジネスローン同様、短期間を乗り切るための利用に留めておくのがおすすめです。
事業の資金としては利用できない
カードローンは個人利用のみを想定しています。
個人利用目的で借りて事業資金に回すことはできませんので注意してください。
借入限度額は低め
ビジネスローンに比べるとカードローンの借入限度額は低めで、10~500万円が目安です。
その分下限は低いので、少額をサッと借りてサッと返すことができるなら使い勝手は悪くありません。
借りすぎて多重債務に陥る恐れがある
カードローンには借入限度額は年収の1/3以下までという総量規制があるので1社だけで借りていればそこまで問題はないのですが、2社以上に借り始めると多重債務に陥りやすくなります。簡単に借りることができてしまうため、無計画な利用に陥りやすいということを念頭に入れておきましょう。
他の金融機関からの評価は下がる
ビジネスローン同様に、カードローンの履歴も借入として貸借対照表に残ります。
あまり履歴が多いと、銀行や公的機関の印象が悪くなってしまいます。
資金調達以外でできること
資金繰りがいよいよあぶなくなり、追加の融資も受けられないとなった時、目前にいくつもの支払が迫っていればどれから手を付けていいのかわからなくなります。
しかし、ここで焦って支払の順番を間違えると取り返しのつかないことになってしまいます。
まずは落ち着いて状況を整理・把握しましょう。
支払う優先順位を決める
状況整理をしたら、支払の優先順位を決めましょう。
全ての支払を間に合わせなければと焦る必要はありません。
上でご紹介した対応の早い資金調達手段を上手く使って、最も遅らせてはならない支払から一つずつ済ませていきましょう。
優先度
↑ 高
① 手形・小切手
② 従業員の給与(役員報酬は除く)
③ 買掛金
④ 家賃・光熱費など諸経費
⑤ 融資の返済
⑥ 税金・保険料
↓ 低
優先度:高 手形・小切手は最優先
振り出した手形や小切手の支払期日がせまっている場合は最優先で支払いましょう。
不渡りを出してしまうと全ての金融機関にその事実が共有され、複数回繰り返せば銀行取引停止となり、2年間取引ができなくなってしまいます。
実質的に倒産ですから、会社を維持するためにも最優先で支払う必要があります。
優先度:高 従業員の給与
資金繰りが苦しくなると従業員への支払を先延ばしにしがちですが、これは士気の低下はもちろん最悪不信感から離職される恐れもあり、できる限り優先して支払うべきものです。
どうしても払えない、というときは丁寧に事情を説明し、全額待ってもらうのではなく一部を先に支払って残りの何割かを待ってもらうなど、誠実にお願いしましょう。
そして早急に資金を確保して残りを支払いましょう。
優先度:高~中 買掛金
自社よりも規模の小さな取引先は、支払が止まれば巻き添えで先に倒産してしまう可能性もあります。
買掛金が複数ある場合、体力のある取引先には事情を説明して支払いを待ってもらえないか相談してみましょう。
優先度:中 光熱費などの諸経費
光熱費などの会社を維持する諸経費はとりあえず1~2か月遅れても何とかなります。
家賃は、持ち主と交渉できるようであれば待ってもらえるか相談してみるのも良いでしょう。
優先度:低 融資の返済・税金・保険料
融資の返済や税金・保険料などは、申請・交渉すれば延期や猶予が可能です。
支払が厳しいとわかった時点で、銀行にはリスケ交渉をしましょう。
新たに期限が設けられ、その間は新規の融資は受けられませんが、突然何も支払えなくなりましたでは銀行も困りますから交渉自体は受け入れてくれるはずです。
税金や保険料はそれぞれの管轄に申請すれば据え置きや分割などの猶予を受けられます。
6か月以内に申請することで延滞金の免除・軽減がされ、差し押さえも回避できます。
慌てずに申請しておきましょう。