ファクタリングを使ったら、会計ってどうなるの?正しい経理処理のやり方を知ろう

手持ちの売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、売掛金を入金期日前に現金化する資金調達法、ファクタリング。このファクタリングを利用する企業は近年増加傾向にあります。

ファクタリング事態は非常に利用しやすい資金調達法ですが、では、ファクタリングを使用した時、どのように経理処理すべきか、悩んでいる経理担当者の方もいらっしゃるかもしれません。

そこで、この記事では、ファクタリングの仕訳方法に関して簡単に解説していきます。経理担当者の方も、ファクタリングの仕組みを理解し、手順通りに経理処理できるように備えておきましょう。

【2社間ファクタリング】買取型ファクタリングの経理処理

ファクタリングにおける経理処理の流れを知るために、まずは2社間ファクタリングの流れを確認しておきましょう。

  1. 申し込み
  2. 審査・契約
  3. ファクタリング会社から入金
  4. 売掛金入金
  5. 入金された売掛金をファクタリング会社に送金

発生した売掛金の売掛債権をファクタリング会社に持ち込み、審査を受けることで契約条件が提示されます。提示された条件に納得すれば契約に至り、契約後ファクタリング会社から現金が入金されます。

ファクタリング契約で、売掛債権の所有権はファクタリング会社に移りますが、売掛債権の契約内容は変更されません。そのため、取引先からの売掛金は、申し込み企業に入金されます。申し込み企業は売掛金を受け取ったら、その売掛金をファクタリング会社に送金して契約完了となります。

この流れの中での、経理処理に関して詳しく解説していきます。解説するため、仮に以下の条件でファクタリング契約したケースで紹介します。

・売掛債権の金額 200万円
・手数料 10%

売掛金発生時

まずは、売掛金発生時の経理処理から確認しておきましょう。
これはファクタリングを利用してもしなくても同じですので問題ないでしょう。

借方貸方
売掛金2,000,000円売上2,000,000円

ファクタリング契約成立時

ファクタリング契約が締結されると、勘定科目が変わります。

借方貸方
未収入金2,000,000円売掛金2,000,000円

ファクタリング会社から入金があった時

ファクタリング会社から入金があった場合の経理処理を確認しておきましょう。ファクタリング契約の場合は、ファクタリング金額から手数料を差し引いた金額が入金されますので、下記のような処理になります。

借方貸方
普通預金1,800,000円未収入金2,000,000円
売掛債権売却損200,000円

入金された現金は普通預金という勘定科目で仕訳します。手数料に関しては、売りあっけ債権売却損となります。

現実のファクタリング契約では、手数料以外にも事務手数料や債権譲渡登記費用などが必要になるケースがありますので、こうした支出が発生する場合は、それぞれの勘定科目で仕訳ましょう。

取引先から売掛金が入金された時

売掛金の入金期日までに、取引先から売掛金が入金されます。その場合の仕訳が以下の通りです。

借方貸方
普通預金2,000,000円預かり金2,000,000円

入金された売掛金は普通預金とし、貸方では「預り金」で仕訳ます。ファクタリング契約において、売掛債権の所有権は、ファクタリング会社に移行していますので、形としては、ファクタリング会社に代わって申し込み企業が売掛金の回収を行っている状態です。

そのため、ファクタリング会社から売掛金を預かっている形で仕訳ます。

ファクタリング会社に売掛金を送金した時

最後に入金された売掛金をファクタリング会社に入金したときの仕訳を紹介します。

借方貸方
普通預金2,000,000円預かり金2,000,000円

借方 貸方
普通預金 2,000,000円 預かり金 2,000,000円

これでファクタリングに関する仕訳は完了です。

【3社間ファクタリング】買取型ファクタリングの経理処理

3社間ファクタリングの場合ファクタリングの流れにやや違いがあります。まずは3社間ファクタリングの流れを確認しておきましょう。

  1. 申し込み
  2. 審査・契約
  3. 取引先に債権譲渡通知を行う
  4. 取引先とファクタリング会社が契約
  5. ファクタリング会社から入金

売掛債権をファクタリング会社に持ち込み、審査を受けて契約を行うまでの流れは2社間ファクタリングと同様です。この契約のタイミングで取引先に債権が譲渡されることを通知します。
通知を受けた取引先が、売掛債権の譲渡を認め、ファクタリング会社と契約を結べば3社間ファクタリングが完成します。2社間ファクタリングとの大きな違いは、この取引先とファクタリング会社の契約において、売掛金の入金先が、申し込み企業の口座からファクタリング会社の口座に変更されることです。

すべての契約が成立すると、ファクタリング会社から申し込み企業の口座に、入金が行われます。売掛金は、取引先から直接ファクタリング会社に入金されますので、申し込み企業は関与しません。

ファクタリング会社から入金があった時点で、申し込み企業のファクタリング契約は履行完了となり、経理処理もここで完了します。

・売掛債権の金額 200万円
・手数料 3%

3社間ファクタリングに関しても、上記の条件で経理処理の具体例を紹介していきます。

売掛金発生時

売掛金発生時の経理処理に関しては、2社間ファクタリング同様です。

借方貸方
売掛金2,000,000円売上2,000,000円

ファクタリング契約成立時

2社間ファクタリングでも、3社間ファクタリングでも、ファクタリング契約において、売掛債権を譲渡しますので、経理処理は同様の処理となります。

借方貸方
未収入金2,000,000円売掛金2,000,000円

ファクタリング会社から入金があった時

ファクタリング会社から入金があったら、手数料を売掛債権売却損で仕訳し、下記のような処理を行います。

借方貸方
普通預金1,940,000円未収入金2,000,000円
売掛債権売却損60,000円

3社間ファクタリングの場合、売掛金の入金先はファクタリング会社の口座に変更されます。つまり、ファクタリング会社から、売掛債権の譲渡に対する対価を受け取った以降、申し込み企業には入出金はないため、経理上の処理が発生しません。

3社間ファクタリングの場合、この段階で仕訳完了となります。

保証型ファクタリングの経理処理

ファクタリング契約において、は、保証型ファクタリングという契約方法があります。これは売掛金に対する保険のようなファクタリング契約です。保証型ファクタリングの流れを確認しておきましょう。

  1. 申し込み
  2. ファクタリング会社による与信調査
  3. 保険料・保険限度額が決定し契約
  4. (売掛金が問題なく支払われた場合) 契約完了
  5. (売掛金が未回収となった場合) ファクタリング会社が保証金額を入金

申し込み企業は、売掛債権をファクタリング会社に持ち込み、与信調査を依頼します。与信調査の結果、ファクタリング会社が保証料と保証限度額を決定、この内容に問題がなければ保証契約を結びます。保証契約が成立したら、申し込み企業はファクタリングに保証金を支払う形です。

売掛金が入金期日までに問題なく振り込まれれば、その時点で契約は完了です。もちろん保証料は戻ってきません。売掛金が未回収となった場合、その時点で債権譲渡契約が成立し、保証限度額がファクタリング会社から入金されます。

主に初めて取引を行うケースなどで利用されるファクタリング契約であり、万が一に備えた契約となります。

・売掛債権の金額 200万円
・保証料 5%

上記のケースで、保証型ファクタリングの際の経理処理を確認していきます。

売掛金発生時

売掛金発生時の経理処理は、通常と同様です。

借方貸方
売掛金2,000,000円売上2,000,000円

保証型ファクタリング契約成立時

保証型ファクタリングの契約が成立した時は、保証金を支払うタイミングでもありますので、経理上は以下のように処理します。

借方貸方
支払手数料100,000円普通預金100,000円

保証料は支払手数料で仕訳します。

売掛金が入金されなかった場合

売掛金が問題なく入金された場合は、通常通りに仕訳を行えばそれで経理処理は完了となります。問題は売掛金が入金されなかったケースでしょう。売掛金が未回収となった場合の仕訳は以下のようになります。

借方貸方
貸倒損失2,000,000円売掛金2,000,000円

200万円の売掛金が入金されないわけですから、200万円は貸倒損失という勘定科目で仕訳します。保証料に関してはすでに仕訳済ですので、このタイミングで保証料を考慮する必要はありません。

ファクタリング会社から入金があった時

売掛金が未回収となった場合、ファクタリング会社から保証限度額までの保証金が入金されます。その際の経理処理は以下のようになります。

借方貸方
普通預金2,000,000円雑収入2,000,000円

貸方は雑収入の勘定科目で仕訳を行います。この時点で、売掛債権はファクタリング会社に譲渡され、未回収の売掛金の回収はファクタリング会社が行いますので、申し込み企業の経理処理はここまでとなります。

ファクタリングの経理処理の注意点

ここまで、代表的なファクタリング契約における、経理処理に関して解説してきました。実際に会計処理を行う場合は、さらに細かい点も確認しながらの処理が必要となりますが、大まかな勘定科目や署るの手順は上記の通りとなります。

ここからは、ファクタリングを利用した際、経理処理で注意すべき点に関して簡単に解説していきます。

ファクタリングの手数料は消費税非課税

経理処理に関しては、消費税の取り扱いが気になるところかと思います。

ファクタリングは、債権譲渡取引です。債権譲渡取引に関しては、非課税取引とされているため、消費税の非課税対象となります。手数料に関して消費税を考慮する必要はありません。

債権譲渡登記費用は消費税課税対象

2社間ファクタリングの多くの場合、債権譲渡契約の内容に、債権譲渡登記を行うことが付随されます。

債権譲渡登記とは、売掛債権の所有権を譲渡したことを、法務局に登記する手続きで、公的機関により債権の所有権をハッキリとさせるために行います。この債権譲渡登記により、売掛債権の二重譲渡を防ぐために付随されます。

債権譲渡登記を行うのは、多くの場合司法書士です。登記業務は司法書士の独占業務であるため、ファクタリング会社が契約する司法書士に業務として依頼し、登記が行われます。この債権譲渡登記に必要な経費に関しては、申し込み企業の負担となりますが、こうした実費に関しては消費税の課税対象です。

ファクタリング手数料に関しては消費税は非課税ですが、ファクタリング契約に必要な実費の経費に関しては消費税の課税対象となりますので、経理処理の際は注意が必要です。

決算期をまたぐファクタリングに注意

ファクタリングを申し込み、ファクタリング会社から入金されるまでに間に決算をまたいでしまった場合には、現金化前の売掛金は課税対象となり、未入金であっても納税する義務が発生します。

決算期をまたぐファクタリングは、税務処理が複雑になりますので、ファクタリングを利用する場合はそのタイミングも十分考慮して利用するのがおすすめです。

まとめ

ファクタリングを利用した場合の経理処理に関して解説してきました。

ひとつずつ手順を踏んで考えれば、経理処理自体はそこまで難しいものではないかと思います。ただし、経理担当の方が、ファクタリングの仕組みを理解していないと、誤った経理処理をしかねませんので、ファクタリングを利用する際は、経理担当者にもその仕組みを理解してもらうことが重要です。

経理処理のポイントは、手数料は売掛債権売却損で仕訳することや、手数料は消費税非課税対象である点でしょう。

こうしたポイントを抑えながら、手順通りに丁寧に経理処理するようにしましょう。

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