建設業界は受注後に入金されるまでの期間が平均3ヶ月以上かかるため、入金されるまでの資金ショートに悩まされる経営者や経理担当者も多いのではないでしょうか。
人件費や材料費を先行して出費することが多く、工事原価の見積もりが不正確なために利益が出ない工事を受注してしまうことも、建設現場における悩みとなっています。
当記事では建設業界のおすすめの資金調達方法や、建設業の資金繰りを改善させるためのポイントについて解説していきます。
建設業界の特徴と資金調達の課題とは
建設業界には特徴があり、資金調達や資金繰りは課題が伴いやすいのが実情です。
- 工事1件あたりの金額が非常に高い
- 工事完成まで売上が立たないうえに、工期も長い(工事完成基準の場合)
- 材料費や人件費、外注費などの支払いが先行しやすい
先行して資金を確保する必要があるケースが多く、大規模な工事となれば受注自体にも一定の資金力を有しておかねばなりません。
そのため建設現場においては、事業拡大における資金調達が重要な意味を持つことになります。
【ステージ別】建設業界のおすすめの資金調達方法
建設業において資金調達の方法は様々ありますが、会社の事業のステージ別におすすめの借り入れ方法を検討してみましょう。
【創業期】日本政策金融金庫
創業期に活用したいのが日本政策金融金庫の「新融資創業制度」です。融資限度額は3,000万円(うち運転資金1,500万円)となります。 「新融資創業制度」は低金利かつ担保・保証人が原則不要のため、融資を受けるハードルが低いのが魅力です。ただし創業から2期以内という条件に注意しましょう。 融資の審査においては事業経験が重視されます。建設業における経験や経歴など、独立に至るまでの過程を整理しておくことで、審査時の評価を高めておけるように準備しておきましょう。
(参考:新創業融資制度|日本政策金融公庫)
【安定期】信用保証制度の活用
事業に一定の収益が見込めるようになった段階では、「信用保証制度」を活用した資金調達がおすすめです。
「信用保証制度」とは、事業者が金融機関から事業資金を借り入れる際に、信用保証協会が公的な保証人となることで、企業の資金繰りを円滑にすることを目的とした制度です。
事業者が信用保証協会に保証料を支払うことで、万が一借入金を返済できなくても、代わりに支払うことを約束してくれます(代位弁済)。そのため金融機関も事業者に融資を行いやすくなる仕組みが整うのです。
信用保証制度を活用するにあたり、地方銀行や信用金庫との接点が持てることもメリットになります。プロパー融資への足掛かりとしても価値がある資金調達方法になります。
(参考:一般社団法人 全国信用保証協会連合会)
【目標】プロパー融資
プロパー融資とは、信用保証を必要とせずに金融機関から直接融資を受けることです。
金融機関の担当者も、経営破綻による不良債権化というリスクを懸念してしまい、なかなかプロパー融資を打診してくれないケースもあります。そのため返済実績を着々と積み上げながら、安定した経営を続けなければなりません。
プロパー融資のメリットは以下の通りです。
- 融資額の上限が設けられていない
- 金利が低く設定されている
- 保証料の支払いが不要
- 企業の信用度が上がる
- 審査日数が短い
数年間にわたって特定の金融機関との取引があり、経営状態が好調であれば、プロパー融資を打診してみるのもよいでしょう。
建設業の資金繰りを改善させるための3つのポイント
建設業の資金繰りを改善させるためのポイントは以下の通りです。
- 資金繰り表を作成して入出金を管理する
- 利益重視の受注に切り替える
- 早期に代金を回収できる工事を受注する
それぞれ解説していきます。
資金繰り表を作成して入出金を管理する
資金繰りを改善させるためには、入出金の時期を管理することが大切です。
売上がいつ入金され、仕入れ代金や固定費はどのくらい発生するのか、金額を明確にすることで運転資金が不足するタイミングを明らかにすることができます。
入出金の把握を怠ってしまうと、支払いが滞ってしまい、取引先との信頼を失ってしまうかもしれません。
決算自体は黒字でも、売上が入金されるまでに資金がショートしないように、資金繰り表を用いて入出金の日付や金額や内訳を明らかにしておきましょう。
利益重視の受注に切り替える
工事を受注する基準として、発注金額の大きさではなく、工事によって想定される利益率を重視してみましょう。
たとえ売上の金額が大きくても、人件費や材料費を考慮すると赤字になるケースもあります。突発的な工期の遅延や、外注業者における人員調達の再確保によってコストが増してしまうなど、受注時の見積もりから大幅なズレが生じることも想定されます。
工事期間中に人件費や材料費の支払いを行うことで資金繰りが苦しくならないかを確認し、赤字になるようであれば受注を見送ったほうがよいでしょう。
早期に代金を回収できる工事を受注する
建設業界では工事が完工した後に一括入金されるのが一般的ですが、工事の進捗に合わせて入金される条件も増えつつあります。
「工事着手金」や「中間金」といった前払い分を条件として取り付けることができれば、少しは資金繰りが改善することでしょう。
前払い分を少しでも多くするためには受注時の条件交渉が必須です。下請けや孫請けでの受注となれば、自社に有利な条件での契約は難しいかもしれませんが、工事の進捗に応じて入金してもらえるよう、粘り強く交渉してみましょう。
建設業者が活用しやすい資金調達方法
建設業者が活用しやすい資金調達方法は以下の通りです。
- オンライン融資(ビジネスローン)
- 日本政策金融金庫
- 地域建設業経営強化融資制度
それぞれ解説していきます。
オンライン融資(ビジネスローン)
オンライン融資とは、事業者が財務状況や経営状態などのデータを銀行に送信すると自動的に審査が行われ、迅速な融資が実現する仕組みです。
申し込みから融資開始までオンライン完結で来店不要なため、都市銀行を含む一部の銀行で活用されており、「ビジネスローン」とも呼ばれています。
銀行の審査が迅速なためスピード融資となりやすく、申し込みもそこまで煩雑ではありません。ただし金利が比較的高めに設定されているため、ローンを組んだ時点で返済計画を立てておくことが大切です。
日本政策金融金庫
日本政策金融金庫は、国が100%出資した政府系金融機関で、低金利かつ無担保・無保証の融資制度があるのが特徴です。
審査の際には事業活動における経験を重視する傾向にあり、建設業にて長年の経歴や実績があれば、評価を受けやすいといえます。
創業期のような状況でも融資を受けやすいため、民間の金融機関にて融資を受けられないという方は、日本政策金融金庫の活用も視野に入れてみてください。
地域建設業経営強化融資制度
地域建設業経営強化融資制度とは、国・地方公共団体や民間企業から公共性の高い建設工事を受注した時に利用できる融資制度のことです。
工事の出来高に対して低金利で融資が行われるため、受注する時点で資金調達の計画を立てやすくなるのがメリットとなります。建設業振興基金が債務保証を行うことから、スピード感のある融資を受けられるのも魅力です。
また当制度による借入金の額は、経営事項審査において、負債合計額から控除することができます。公共性の高い建設工事を請け負う機会があれば、ぜひ検討してみましょう。
ファクタリング
ファクタリングとは、利用者が保有している売掛債権をファクタリング会社に売却(買取)し、期日よりも早いタイミングで資金化できる金融サービスのことです。
後述しますが、ファクタリングは建設業界と相性が良い資金調達方法です。資金繰りの改善にとても役立つでしょう。
建設業とファクタリングの相性が良い4つの理由
建設業とファクタリングの相性が良い理由は以下の通りです。
- 建設業界の売掛債権は人気が高い
- 借入金ではないので経営事項審査には影響しない
- 既に借り入れができない状況でも利用可能
- 取引先に知られずに利用可能
それぞれ解説していきます。
建設業界の売掛債権は人気が高い
建設業の債権は1件あたりの金額が高額で、大手ゼネコンのように売掛先の信用力が高いことから、ファクタリング会社からも好印象を抱かれます。
そのため手数料は比較的低い利率で成約しやすく、審査にも通りやすいため、スピード資金として緊急での資金調達が可能です。
借入金ではないので経営事項審査には影響しない
公共工事を発注者から直接請け負う場合、経営事項審査を受けなければなりません。借入金が増えてしまうと、審査における評価は下がってしまいます。
しかしファクタリングは売掛債権を売却(買取)となるため、経営事項審査の点数には一切影響しません。
既に借り入れができない状況でも利用可能
金融機関などで既に融資を受けており、これ以上融資を受けられないような状況でも、ファクタリングは利用可能です。売掛債権さえ保有していれば問題ありません。
建設業のように、売掛債権が入金されるまでに一定の期間を要するような業態であれば、すぐに資金化できるファクタリングは相性が良いでしょう。
取引先に知られずに利用可能
2社間ファクタリングを利用することで、取引先に知られることなく、売掛債権を資金化することができます。
建設業者は元請けや得意先との関係構築が非常に重要です。3社間ファクタリングの場合、ファクタリング会社が売掛先に債権を請求することになるため、心証を損ねてしまうリスクがあります。
若干手数料はかかるものの、取引先との影響を踏まえると、2社間ファクタリングのほうが望ましいでしょう。
まとめ
建設業界特有の売上サイクルを把握することで、資金繰りの対策を立てておくようにしましょう。
まずは資金繰り表を作成し、入出金管理を行うようにしましょう。資金ショートを迎えそうな時期に合わせて資金調達の計画を立てるなど、早期対策を練ることができます。
早期に代金を回収できる工事を受注できることも望ましいです。工事の進捗に応じた入金が実現できれば、今後の工事受注の先行出費に充てられる好循環を生み出せます。
最後に、建設業界の事業者向けともいえるファクタリングの利用も検討してみましょう。建設業界の売掛債権は人気が高いことから、手数料を抑えて早いタイミングで現金化が実現します。借入金ではないので経営事項審査に影響しないのもメリットです。