建設業界のための資金繰り改善ガイド:長期プロジェクトの挑戦を乗り越える

建設業界は工期が長いことから、受注から入金までの期間が長く、資金繰りが厳しくなりやすい傾向にあります。先行出費もかさむため、キャッシュフローが厳しい状態にならざるを得ない状況も生まれやすいです。

では建設業界にて資金繰りを改善するためには、どのような対策が必要になるのでしょうか。当記事では建設業界の現状や課題を踏まえて、建設業界の資金繰り悪化の原因や資金調達のための手段について紹介していきます。

建設業界の現状と課題

建設業界の倒産件数は2021年までは減少傾向でしたが、2021年の倒産件数は1,065件、2022年の倒産件数は1,194件と、前年比12%増となっています。また2023年は11月末時点で倒産件数が1,530件と、既に前年を超える勢いです。
(参考:中小企業庁:倒産の状況

コロナ禍による受注件数の増加や、国際情勢によるエネルギー価格の上昇や、円安による建設資材の高騰などが背景にあると考えられます。

また建設業界の就業者数は令和4年の時点で479万人ですが、平成9年から約30%減と明らかに減少傾向にあります。年齢層として55歳以上が35.9%と、29歳以下が11.7%と高齢化が進行していることから、次世代の担い手が確保しにくいのも現状です。
(参考:建設業を巡る現状と課題

建設業界の資金繰りにおける4つの課題

建設業界においてネックとなるのは資金繰りの課題です。具体的には以下の通りです。

  • 入金までの期間が長い
  • 支払いが先行しやすい
  • 長期的な融資を受けにくい
  • 手形取引が多い

それぞれ解説していきます。

入金までの期間が長い

建設業界では工期が長い案件が多いため、工事の受注から入金までの期間が長くなるのが一般的です。天候などの制御が難しい外部要因で工期が延びることもあり、入金の時期が後ろ倒しになることも珍しくありません。

支払いが先行しやすい

建設業界では、必要な資材の購入費用や重機のリースなどなど、工事代金の入金よりも先に支払いを済ませなければなりません。また従業員や外注業者への外注費などは当然ながら毎月支払う必要があるため、工期が長くなればなるほど先行出費が大きくなります。

入金までの期間は出費を立て替える必要が出るため、手元の運転資金を確保した上で、資金繰りを安定させる必要があります。

長期的な融資を受けにくい

建設業界の融資は工事ごとに必要な資金を調達するケースがほとんどです。借入期間は短期間に限定されており、そもそも工事を受注していなければ融資を受けることができません。赤字案件で受注しているケースの場合は、利益が出ていないことを理由に融資を断られることもあります。

また工事の受注が無い状態で、中長期的な再建に向けた長期の融資を受けることも難しいのが現状です。

手形取引が多い

建設業界では商習慣で手形による支払いが行われることもあります。手形は現金化までの期間に平均100日前後かかるため、資金繰りの観点からも好ましくはありません。

ただし政府は手形に代わって「でんさい」の利用を推奨しており、建設業界でも普及が進んでいることから、手形取引は今後減少していくと考えられます。
(参考:建設業界における でんさいの普及状況

建設業界の資金繰りを改善するための4つのポイント

建設業界の資金繰りを改善するためのポイントは以下の通りです。

  • 資金繰り表を作成する
  • 利益率の高い工事を受注する
  • 自社の規模に合った工事を受注する
  • 代金の回収サイクルを早める

それぞれ解説していきます。

資金繰り表を作成する

資金繰りを改善させるためには、入出金の時期を管理することが大切です。

売上がいつ入金され、仕入れ代金や固定費はどのくらい発生するのか、金額を明確にすることで運転資金が不足するタイミングを明らかにすることができます。

入出金の把握を怠ってしまうと、支払いが滞ってしまい、取引先との信頼を失ってしまうかもしれません。

決算自体は黒字でも、売上が入金されるまでに資金がショートしないように、資金繰り表を用いて入出金の日付や金額や内訳を明らかにしておきましょう。

利益率の高い工事を受注する

工事を受注する基準として、発注金額の大きさではなく、工事によって想定される利益率を重視してみましょう。

たとえ売上の金額が大きくても、人件費や材料費を考慮すると赤字になるケースもあります。突発的な工期の遅延や、外注業者における人員調達の再確保によってコストが増してしまうなど、受注時の見積もりから大幅なズレが生じることも想定されます。

自社の規模に合った工事を受注する

売上額が大きい工事は、会社にとって一見魅力的に映ります。しかし自社の規模以上の工事を受注した場合、材料費や労務費や外注費などの負担も大きくなり、先行出費によって資金繰りが苦しくなる可能性も高まります。

財務諸表や資金繰り表の数値を踏まえた上で、受注するか否かを決断することも大切です。

代金の回収サイクルを早める

建設業界では工事が完工した後に一括入金されるのが一般的ですが、工事の進捗に合わせて入金される条件も増えつつあります。

「工事着手金」や「中間金」といった前払い分を条件として取り付けることができれば、少しは資金繰りが改善することでしょう。

前払い分を少しでも多くするためには受注時の条件交渉が必須です。下請けや孫請けでの受注となれば、自社に有利な条件での契約は難しいかもしれませんが、工事の進捗に応じて入金してもらえるよう、粘り強く交渉してみましょう。

建設業者が資金調達のために活用したい手段

建設業者が資金調達のために活用できる手段をご紹介します。具体的には以下の通りです。

  • 日本政策金融金庫の融資
  • 信用保証付き融資
  • 銀行の融資
  • 手形割引
  • ファクタリング

それぞれ解説していきます。

日本政策金融金庫の融資

日本政策金融金庫は、国が100%出資した政府系金融機関で、低金利かつ無担保・無保証の融資制度があるのが特徴です。

創業期に活用したいのが日本政策金融金庫の「新融資創業制度」です。融資限度額は3,000万円(うち運転資金1,500万円)となります。

「新融資創業制度」は低金利かつ担保・保証人が原則不要のため、融資を受けるハードルが低いのが魅力です。ただし創業から2期以内という条件に注意しましょう。
(参考:新創業融資制度|日本政策金融公庫

創業期のような状況でも融資を受けやすいため、民間の金融機関にて融資を受けられないという方は、日本政策金融金庫の活用も視野に入れてみてください。

信用保証制度を活用した融資

「信用保証制度」とは、事業者が金融機関から事業資金を借り入れる際に、信用保証協会が公的な保証人となることで、企業の資金繰りを円滑にすることを目的とした制度です。

事業者が信用保証協会に保証料を支払うことで、万が一借入金を返済できなくても、代わりに支払うことを約束してくれます(代位弁済)。そのため金融機関も事業者に融資を行いやすくなる仕組みが整うのです。

信用保証制度を活用するにあたり、地方銀行や信用金庫との接点が持てることもメリットになります。プロパー融資への足掛かりとしても価値がある資金調達方法になります。
(参考:一般社団法人 全国信用保証協会連合会

プロパー融資

プロパー融資とは、信用保証を必要とせずに金融機関から直接融資を受けることです。数年間にわたって特定の金融機関との取引があり、経営状態が好調であれば、銀行の側からプロパー融資を打診される見込みが生まれます。

金融機関の担当者は、経営破綻による不良債権化というリスクを懸念しています。そのため返済実績を着々と積み上げながら、安定した経営を続けていくことが大切です。

プロパー融資のメリットは以下の通りです。

  • 融資額の上限が設けられていない
  • 金利が低く設定されている
  • 保証料の支払いが不要
  • 企業の信用度が上がる
  • 審査日数が短い

手形割引

手形割引とは、手形を支払期日より前に銀行等に持ち込んで、現金に変えてもらうことです。手形の額面金額から支払期日までの金利や手数料を差し引いた金額を受け取ることができます。

建設業界では慣習として手形割引が残っており、入金期間が長期化するのがネックです。しかし手形割引を活用することで、期日が到来する前の手形でも換金が可能となります。

手形割引を行うためには金融機関か手形割引業者に依頼する必要があります。割引率は金融機関のほうが安く、審査スピードは手形割引業者のほうが早い傾向にあります。状況に応じてどちらを利用すれば良いか検討してみてください。

ファクタリング

ファクタリングとは、利用者が保有している売掛債権をファクタリング会社に売却(買取)し、期日よりも早いタイミングで資金化できる金融サービスのことです。

建設業の債権は1件あたりの金額が高額で、大手ゼネコンのように売掛先の信用力が高いことから、比較的低い利率の手数料で成約しやすい傾向にあります。

また2社間ファクタリングを利用することで、取引先に知られることなく、売掛債権を資金化することができます。元請けや得意先に知られることなく取引を進められるため、心証を損ねることもありません。

建設業界のための資金繰り改善ガイド:まとめ

建設業界は入金までの期間が長く、先行出費もかさむために、資金繰りが悪化しやすい業界です。資金繰りを改善するためには、単に売上額だけではなく、利益率を判断軸に加えた上で、受注の意思決定をすることが望ましいといえます。

また受注の際には出費が大きくなる月を把握しておくことで、未然に資金ショートを防ぐ
といった対策も重要です。入金サイクルを短くするための交渉が実現すれば、資金繰りに余裕を持たせることで、次の工事受注にもつなげやすくなるでしょう。

また金融機関からの融資だけでなく、ファクタリングといった資金調達の選択肢も存在します。幅広く資金調達の選択を持っておくことで、より柔軟に資金繰りの変動に対応することができるでしょう。