建設業においては支払いが先行しやすく、入金されるまでの期間が長いことから、資金繰りが厳しくなる傾向にあります。また銀行からの長期融資を受けることは決して簡単ではなく、手形取引による現金化の後ろ倒しといった問題点も生じています。
当記事では建設業の資金繰りが厳しいといわれる理由や、資金繰りに困った際に運転資金を確保する方法について紹介していきます。ぜひ参考にしてみてください。
建設業の資金繰りが厳しいといわれる4つの理由
建設業の資金繰りが厳しいといわれる理由をご紹介します。主な理由は以下の通りです。
- 支払いが先行しやすい
- 入金されるまでの期間が長い
- 長期的な融資を受けにくい
- 依然として手形取引が多い
それぞれ解説していきます。
支払いが先行しやすい
建設業においては、支払いが先行しやすいことから、資金繰りが厳しくなりやすい傾向にあります。
工事を受注した後は、材料費や人件費や外注費など多額の費用を支払う流れとなります。また工期が延長したり、追加工事が発生したりすることで、自己資金で立て替えを行う必要も生じてしまうのです。
そして工事代金は完成後に入金される流れとなるため、先行した出費の負担を抱えることになり、資金繰りが厳しくなってしまいます。
入金されるまでの期間が長い
他業界と比べて、建築業の資金繰りは、入金されるまでの期間が長いという特徴が挙げられます。
工事を受注してから入金されるまでの平均期間は、およそ3ヶ月半です。大規模な工事となれば、完成までに数ヶ月や年単位の工期が見込まれることから、更に入金のタイミングが遅れてしまいます。
代金の一部を段階的に支払ってもらったり、工事の進捗に応じて支払ってもらったりするケースを除けば、現金がショートしやすい状況が続いてしまうでしょう。
長期的な融資を受けにくい
銀行から長期的な融資を受けたいような状況でも、建設業は他の業種と比べると審査を断られやすいのが実情です。
建設業は先行出費が多いだけでなく、案件を赤字で受注している会社もあることから、銀行側は財務体質に懸念を感じてしまいます。融資を行っても返済が滞る可能性が生じてしまうのであれば、銀行が融資を渋るのは当然といえるでしょう。
回収した工事代金を返済に充てるような融資は短期間で行われることから、工期が長い場合には融資を行うことが難しいと判断されてしまうケースもあります。
依然として手形取引が多い
建設業では依然として手形取引が多いことから、資金繰りが悪化しやすい一因となっています。
手形は現金化までに平均100日前後の期間がかかります。受け取る側としては現金化までに時間がかかってしまうことから、決して好ましくない決済方法です。
しかし建設業全体の商慣習として根付いている点や、支払い側や受け取り側が電子記録債権を利用していない点などから、未だに手形が活用されているのです。
ただし政府は手形に代わって「でんさい」の利用を推奨しており、建設業界でも普及が進んでいることから、手形取引は今後減少していくと推測されています。
(参考:建設業界における でんさいの普及状況)
建設業にて運転資金を確保する7つの方法
建設業にて資金繰りに困った場合、どのような方法で運転資金を調達すれば良いのでしょうか。具体的な方法は以下の通りです。
- ファクタリング
- 手形割引
- オンライン融資
- 助成金や補助金
- 資産の売却
- 日本政策金融公庫
- 地域建設業経営強化融資制度
それぞれ解説していきます。
ファクタリング
ファクタリングとは、利用者が保有している売掛債権をファクタリング会社に売却(買取)し、期日よりも早いタイミングで資金化できる金融サービスのことです。
建設業の債権は高額であり、大手ゼネコンのように売掛先の信用力が高いことから、取引が成立しやすいことがメリットです。比較的低い手数料で審査にも通りやすいことから、スピード資金としての資金調達も可能となります。
またファクタリングは売掛債権を売却(買取)する取引であるため、借入金には該当しません。経営事項審査の点数に影響しないことも安心材料となります。
また2社間ファクタリングを利用すれば、取引先に知られることなく、売掛債権を現金化することができます。元請けや得意先に財務状況の悪化を知られる心配が無いことから、信用低下につながる心配もありません。
銀行以外での資金調達方法として、まずファクタリングをおすすめします。
手形割引
手形割引とは、手形を支払期日より前に銀行等に持ち込んで、現金に替えてもらうことです。
手形の額面金額から支払期日までの金利や手数料を差し引いた金額を受け取ることができます。金融機関あるいは手形割引業者にて手形を換金する流れとなります。
建設業界では手形取引が未だに行われており、現金化までに時間がかかるのが懸念点でした。しかし手形割引を利用すれば、状況に応じてスピード資金調達を実現できるのです。
注意点として、手形を売却するという流れではありますが、実際には融資を受けるという扱いとなります。そのため手形の振出人あるいは利用者の信用情報に問題があると判断された場合は、利用を断られるケースもあるでしょう。
手形割引の手数料は、都市銀行などの銀行で2~3%、信用金庫で2.5~5%、手形割引業者で2.5%~15%となります。相場として参考にしてみてください。
オンライン融資
オンライン融資とは、事業者が財務状況や経営状態などのデータを銀行に送信すると自動的に審査が行われ、迅速な融資が実現する仕組みです。
申し込みから融資開始までオンライン完結で来店不要なため、都市銀行を含む一部の銀行で活用されており、「ビジネスローン」とも呼ばれています。
スピード融資が実現しやすいだけでなく、申込の手続きの複雑ではありません。スマホからも申し込み可能です。
注意点としては、赤字決算が続いている場合、融資金額の上限が低くなってしまう可能性があることです。融資金額の上限自体も1,000万円と比較的低いことに留意しておきましょう。つなぎ資金や月末の支払いの備えるという使い方は有効といえます。
助成金や補助金
政府や各種機関が実施している、助成金や補助金を利用することも運転資金の方法として有効です。
厚生労働省は「建設事業主等に対する助成金」を実施しており、雇用に関する取り組みに応じて、企業は助成を受けることができます。
(参考:建設事業主等に対する助成金(旧建設労働者確保育成助成金)|厚生労働省)
また中小企業庁及び独立行政法人中小企業基盤整備機構が実施する「ものづくり補助金」は、建設業も対象となっています。一例としては、クレーンや木材破砕機といった設備投資の費用に充てることが可能です。
(参考:トップページ|ものづくり補助事業公式ホームページ)
助成金や補助金ごとに、利用できる条件や金額は異なります。申し込めそうなものがあれば、まずはお問い合わせや相談を行ってみましょう。
資産の売却
所有している資産を売却することで、資金を確保するという方法も考えられます。対象となる資産は、主に不動産や有価証券が挙げられます。保有している企業にとっては、検討材料となるでしょう。
自社ビルにオフィスを構えている場合は、拠点を移したうえで売却することも有効です。不動産を売却することで固定資産税を削減できるというメリットもあります。
また不動産や有価証券の価格が低下することで、売却した際に含み損が生じます。その際には損金の計上が可能となることから、節税の効果も期待できるでしょう。
日本政策金融公庫
日本政策金融金庫は、国が100%出資した政府系金融機関で、低金利かつ無担保・無保証の融資制度があるのが特徴です。
「新融資創業制度」は低金利かつ担保・保証人が原則不要のため、融資を受けるハードルが低いのが魅力です。オンライン完結の資金調達方法よりも金利が低いことから、資金繰りに困っている企業にとっては注目すべき制度となります。
(参考:新創業融資制度|日本政策金融公庫)
銀行の審査に通らないような企業でも、資金調達の手段として十分選択肢に入るといえます。
地域建設業経営強化融資制度
地域建設業経営強化融資制度とは、国・地方公共団体や民間企業から公共性の高い建設工事を受注した時に利用できる融資制度のことです。
工事の途中段階にて工事請負代金における債権を現金化できることから、資金繰りの改善を行い、経営基盤の安定を確保することができます。また一般財団法人建設業振興基金や保証事業会社の債務保証を受けられることから、安定的で低金利な資金調達にも期待できるでしょう。
融資を受けているというより、工事の出来高に応じて分割で料金が支払われているという感覚で利用できます。スピード融資を受けられることから、スピード感をもって資金調達ができることも強みです。
(参考:地域建設業経営強化融資制度について 国土交通省)
まとめ
一般的に建設業では様々な要因で資金繰りが厳しくなる傾向にあります。出費が先行しやすく、入金までの期間が長いことから、資金ショートに陥ってしまう企業も珍しくありません。
建設業において運転資金を確保する方法は多数存在しますが、特におすすめしたいのはファクタリングです。オンライン完結かつ来店不要にて即日現金化が可能なことから、緊急での資金調達が可能となります。建設業の債権は信頼度が高いことから、手数料を抑えた取引も可能です。
もし運転資金の確保を検討している場合は、ファクタリング業者に問い合わせを行ってみましょう。