会社が赤字決算となれば、今後の資金繰りや事業計画など再建に向けて舵を取らなければなりません。「赤字決算でも銀行融資を受けられるのか」という問題も発生します。
結論としては、赤字決算でも銀行融資を受けることは可能です。ただし赤字決算に至った原因を銀行から精査されるため、客観的な根拠とともにその理由を明らかにする必要があります。
当記事では赤字決算の種類や、赤字決算でも融資や資金調達を行うための方法について解説していきます。
赤字決算にも様々な種類が存在する
そもそも赤字決算とは、帳簿上の利益がマイナスとなっている状態です。支出が費用や収入を上回っている状態とも言い換えられます。
赤字決算と一口にいっても、企業の経営段階や財務状況によって、赤字に至った原因は異なります。赤字の具体的な種類について確認していきましょう。
創業赤字
創業赤字とは、創業時に支出が増えたために赤字になっている状態です。 起業したばかりの段階だと想定以上の売上が見込めず、会社経営が軌道に乗るまでに一定の時間がかかります。運転資金や設備投資が増大すると、利益の発生や回収までに時間を要することも考えられます。 目安としては3~5年以内に黒字化できる見込みがあり、当初の事業計画の7割前後の実績を出せていれば、赤字でも銀行融資や資金調達できる可能性があるでしょう。
臨時的赤字
臨時的赤字とは、一時的に赤字決算になっている状態です。例えば「多額の設備投資」や「本業以外での理由で赤字に至った」などのケースが該当します。
臨時的赤字の場合、赤字に至った原因が明確であれば、銀行融資や資金調達を受けることも十分可能です。
恒常的赤字
恒常的赤字とは、常に会社の財務状況が赤字となっている状態です。あらゆる赤字状態の中でも、最も望ましくないものだといえます。
会社の支出が常に収入を上回っていることから、仕入れにかかった費用を支払えなくなるのは時間の問題となります。財務面での改善が見込めなければ、いずれは倒産に至るでしょう。
金融機関が融資を検討できる赤字
金融機関は赤字決算という理由だけで融資を控えるわけではありません。赤字の原因次第では、融資を実現することも十分可能です。
一時的な損失の赤字
一時的な損失の赤字であれば、赤字に至った原因を明確に説明することで、融資の可能性を高めることができます。
【例】
- 新規事業のために経費を先行して支出した
- 工場の業務効率化のために、新しい機械を導入した
- 減価償却費を除けば、営業利益はプラスとなる
- 営業利益は黒字だが、多額の特別損失を計上した
→不動産などの固定資産売却損や、長期間保有する株式の売却損など
赤字に至った一時的な過程や理由は様々ですが、融資の担当者に対して明確に説明できるようにしましょう。
黒字化を見込めそうな赤字
今後の事業が黒字に転換しそうな見込みがあれば、赤字でも融資を受けられる可能性は高まります。
経営改善計画書のように、中長期的な経営計画を提示することで、日頃から経営に関する数値を管理しているという実績を残しておくことが望ましいです。
(参考:日本政策金融金庫 経営改善計画書策定の手引)
具体的には、銀行の担当者に対して経営改善計画書を共有しておくことで、計画性の高さをアピールすることができます。計画の達成度合いが高ければ、赤字が発生した場合でも、長期的な黒字化を見据えたうえで融資を受けられるかもしれません。
金融機関が融資を検討できない赤字
一時的な問題や改善可能と判断された赤字は、融資の検討の余地は十分にあります。
しかし融資を受けるには極めて致命的ともいえる赤字の原因も存在します。
恒常的に赤字体質(3期連続の赤字)
「昨年も赤字であり、今年も赤字の会社」は、翌年以降も黒字転換は難しいだろうと判断されてしまいます。銀行の立場からすると「恒常的な赤字体質」と判断されてしまい、判断材料としては致命的です。
2期連続の赤字でも融資を受けられない可能性は高いのですが、3期連続の赤字となれば融資は事実上困難だといえるでしょう。
債務超過
債務超過とは、会社が抱えている負債の総額が、資産の総額を超えている財務状況を指します。債務超過の原因は、具体的には以下の通りです。
- 赤字が恒常化している
- 起業して1年未満である
- 投資のために多額の借り入れを行ったが回収の見込みが乏しい
- 資本金が少なさすぎるために赤字を補填できない
債務超過の企業への融資は検討されにくいですが、直近1~2年間で債務超過が解消されそうな見込みがあれば、融資を受けられる可能性も考えられます。
経営改善が見込めない
赤字決算の場合でも、経営改善計画書において根拠の伴う黒字化の転換計画があれば、融資を受けられるかもしれません。
しかし単に赤字決算からの改善が見込めなければ、資金の返済計画に目処が立たないと判断されてしまうでしょう。
例えば「現状の事業分析」、「現状の課題」、「黒字化に向けた解決策」、「スケジュール計画」など、一貫性のある根拠を示すことが重要となります。
赤字決算でも融資や資金調達を受けるための3つのポイント
赤字決算でも融資や資金調達を受けるためのポイントは以下の通りです。
- 金融機関を選定する
- 融資を受ける金額と使途を明確にする
- ビジネスローンやファクタリングの利用も検討する
それぞれ解説していきます。
金融機関を選定する
一口に金融機関といっても、融資の審査基準や方針は各々によって異なります。
- 日本政策金融金庫
- 信用金庫
- 地方銀行
- 信用組合
中小企業の支援に前向きな地域密着型の金融機関であれば、相談するだけでも今後の方針が見えてくるかもしれません。黒字化に転換できそうな見込みがあれば、たとえ赤字決算でも融資を受けられる可能性は十分にあるでしょう。
融資を受ける金額と使途を明確にする
融資を受ける金額と使途を明確にすることで、事業計画に沿った融資が実現しやすくなります。
「いくらまで借りられるのか」、「融資限度額まで借りたい」というのが事業者の本音ですが、漠然とキャッシュが必要という曖昧な理由では、金融機関の担当者も不安を覚えるはずです。
運転資金か設備資金かはともかく、事業拡大や再建のために必要な融資であることを理解してもらうためにも、融資の金額と使途は明確にしておきましょう。
ビジネスローンやファクタリングの利用も検討する
金融機関での借り入れに目処が立たないなら、ビジネスローンやファクタリングの利用も検討してみましょう。
ビジネスローンは比較的金利が高いものの、審査に通りやすいため、赤字決算の会社でも資金調達しやすい方法です。
ファクタリングは、利用者が保有している売掛債権をファクタリング会社に売却(買取)し、期日よりも早いタイミングで資金化できる金融サービスのことです。
売掛債権の信用度が重視されるため、赤字決算の会社でも問題なく利用できます。
赤字決算ならファクタリングの利用も検討してみよう
赤字決算の会社の場合、黒字に転換できる見込みが乏しければ、金融機関からの資金調達を受けることは難しいといえます。
ファクタリングはむしろ、赤字決算の会社におすすめできる資金調達の方法です。その理由を具体的に解説していきます。
ファクタリングは赤字決算でも利用可能
ファクタリング会社が審査で重視することは、売掛先の会社が売掛金を支払ってくれるかという点です。
自社が赤字決算だったとしても、売掛先の財務状況が良好であれば審査に通りやすくなります。逆に言えば自社が黒字決算でも、売掛先が業績悪化や事業譲渡の見込みがあれば、審査に通りにくくなることも考えられます。
税金の支払いが滞っていても利用可能なケースも多く、銀行以外の資金調達の方法として有力です。
ファクタリングは早急な資金調達にも対応
ファクタリングは早急な資金調達に対応しているため、赤字決算の会社ほど活用すべきサービスだといえます。
赤字決算の会社は手元の運転資金が不足しており、緊急で資金調達が必要になる場面も多いでしょう。金融機関からのスピード融資はあまり期待できませんが、ファクタリングであれば最短即日での現金化も可能です。
月末の支払いや残金不足・残高不足といったつなぎ資金を確保するにもファクタリングは有効です。ファクタリング会社は数多く存在するので、他社NGの売掛債権でも売却(買取)してもらえる可能性は十分にあります。
赤字決算の会社がファクタリングを利用するときの注意点
赤字決算の会社がファクタリングを利用するときの注意点は以下の通りです。
priority 償還請求権の有無を確認しておく
「償還請求権」とは、売掛債権が回収できなくなった際に、ファクタリング会社と利用者のどちらが損失を被るのかを決定するものです。
日本国内におけるファクタリングでは償還請求権が無い「ノンリユース契約」が一般的です。つまり売掛債権が回収不能になっても、利用者に弁済義務は発生しません。
償還請求権があるファクタリングは、利用者にとって不利な契約です。申し込みの前にノンリユース契約であることを確認してください。
priority 債権譲渡登記が必要か不要か確認する
債権譲渡登記は、ファクタリング会社が債権の権利者であることを主張するために行われます。
ただし債権譲渡登記を行うと、登記に数万円の費用がかかる、融資やビジネスローンの審査への影響、売掛先に知られるリスクが生じる、などのデメリットも挙げられます。
債権譲渡登記は利用者側のメリットがあまり無いですが、概要としては理解しておきましょう。
まとめ
赤字決算でも銀行融資を受けることは可能ですが、赤字の原因によっては金融機関が融資を検討できないことを留意しておきましょう。
ビジネスローンやファクタリングなど、赤字決算でもスピード融資が実現するような資金調達の手段もあるため、合わせて検討してみてください。
赤字決算でも資金調達を実現できれば、設備投資などに資金を回すことで、売上や利益の向上による黒字化も見込めるようになるかもしれません。