「今後の事業拡大や再建のために銀行融資を受けたいが、断られてしまった」と悩んでいる経営者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
融資を拒否された理由を明らかにして、客観的に根拠の伴う改善策を提示できれば、銀行融資を受けられる可能性は残されているといえます。
一方で銀行融資を受けることが実質困難であるならば、いち早く他の資金調達を検討すべきタイミングです。
実際の自社の状況と照らし合わせながら、当記事を参考にしてみてください。
銀行融資を断られたら理由を聞き出してみよう
銀行から融資を断られた場合、今後の参考にするためにも担当者から理由を聞き出してみましょう。
ただし担当者に問い合わせても、「総合的に判断した結果」という曖昧な回答しかもらえないこともあります。
金融庁では「中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針」を定めており、その指針の中には「可能な範囲で、謝絶の理由等についても説明する」ことが求められています。
(参考:中小・地域金融機関向けの総合的な監督指針:金融庁)
もし具体的な理由を教えてもらえないなら、上記の指針について言及することで、詳細な理由について多少は教えてもらえるかもしれません。
具体的に融資を断られて理由を把握できることで、再申請に向けた改善につなげることができるようになります。
銀行融資を断られてしまう6つの理由と改善方法
銀行からの融資を断られてしまう理由は様々ですが、代表的な理由は以下の通りです。
- 事業計画書の内容が不明瞭
- 決算書の数字が良くない
- 自己資金が不足している
- 借入金の返済が遅れている
- 税金・公共料金を滞納している
- 個人の信用情報に傷がある
各々の理由に応じた改善方法と合わせて解説していきます。
事業計画書の内容が不明瞭
創業時や赤字経営からの再建のために融資を受けたい場合には、審査にて事業計画書の提出を求められます。事業計画書の内容が雑だったり、再現性に乏しかったりすると、審査に通りにくくなるでしょう。
融資を断られてしまうような事業計画書の例は以下の通りです。
- 売上の根拠に信憑性がない
- 資金繰りの計画が雑で、経営者や経理担当者の説明内容が乏しい
- 売上に対する売上原価や、人件費の割合などのバランスが取れていない
事業計画書を改善するためにも、審査に通りやすくなるためのポイントを把握しておくことが大切です。
【審査に通りやすくなる事業計画書のポイント】
- 事業に対する熱意:経営理念や代表者の人柄や経歴
- 納得できる根拠:市場調査を通した客観的なデータや過去の取引実績
- 具体的な数値化:「大幅に増加」ではなく「10%増加」など、根拠や計算式を記載
【事業計画書の改善例】
NG:自社商品は他社と比べて性能が優れている(具体性や客観性に欠ける)
OK:自社商品は連続稼働時間が20時間であり、競合5社と比較して最も長い
事前の準備で事業計画書の質を高めることは可能です。ぜひ労力を割いて取り組んでみましょう。
決算書の数字が良くない
決算書の数字は、融資の可否を判断するうえで重要な項目です。数字が悪ければ悪いほど、返済の見込みが無いと判断され、融資を受けられる可能性は低くなります。
融資の際にチェックされる数字のポイントは以下の通りです。
- 売上高:事業規模の目安
- 利益:営業利益や経常利益が黒字となっているか
- 借入金:売上や利益に対してどのくらいの割合を占めているか
- 固定資産:土地や建物の有無、担保にできるものがあれば望ましい
- 純資産:債務超過かどうか
営業利益や経常利益が赤字の場合でも、黒字化に向けた資金繰りや事業計画が明確であれば、融資を受けられる可能性もあります。
自己資金が不足している
創業時の融資においては、自己資金が不足していることを理由に融資を断られてしまうケースもあります。資金管理能力の欠如や、借入金の割合が高いことによる経営状態の不安定さが主な理由です。 実際に借りられる創業融資の限度は、自己資金の2倍から3倍が目安です。自己資金が少ないことが理由で融資を断られたときの対処法は以下の通りです。
自己資金を増やす:現金預金、有価証券、親族からの贈与金など
自己資金が不要でも申し込める制度を活用する:日本政策金融金庫の新創業融資制度など
借入金の返済が遅れている
融資を申し込んで返済が遅れていたり、リスケをしたりする場合、新規の融資を断られることがあります。
【リスケとは】
融資の返済条件を変更したり、緩和したりすること
月額返済額を一定期間減額してもらうか、返済期限を延長してもらう
借入金の返済をリスケするということは、財務状況が芳しくないことが原因のため、自ずと会社に対する信用が下がってしまいます。
まずは現在融資を受けている金額を完済するようにしましょう。また金融機関からの心証を考慮するならば、完済後も一定期間は新規融資の申込みを先送りしたほうが賢明です。
税金・公共料金を滞納している
税金や公共料金を滞納している場合にも、融資を断られてしまいます。
もちろん会社としてのモラルに問題があると判断されるのが理由です。ただし万が一会社が倒産した場合、滞納していた税金などの債権を優先的に支払うことになり、融資金を回収できなくなるリスクが生じてしまうのも理由となります。
新規で融資を受けたいなら、税金や公共料金の支払いを終えるようにしましょう。
個人の信用情報に傷がある
個人の信用情報に傷がついている場合、融資の返済能力にも不安があると判断され、融資を断られてしまうケースがあります。
信用情報に傷がつく事由は以下の通りです。
- クレジットカードの支払い遅延・強制解約
- カードローンや住宅ローンの支払い遅延・代位弁済
- 携帯電話代金の支払い遅延・強制解約
- 奨学金の支払い遅延
- 自己破産
- 債務整理
事由の程度にもよりますが、5年から10年ほど経てば、信用情報が回復するといわれています。
今後は滞納などを繰り返さないように心掛けながら、新規融資のタイミングが訪れるのを待ちましょう。
銀行に融資を断られても再申請は可能?
銀行から融資を断られても、その問題点が明確で改善することが可能なのであれば、再申請することは可能です。
【融資を断られても再申請できるケース】
- 自己資金が少ない
- 売上の根拠に対する説明が不明瞭
- 経費の見積もりに対する根拠が欠けている
- 事業計画書の内容が全体的に雑
- 面接で緊張してしまい、上手く説明ができなかった
指摘された点を真摯に受け止めて、再び審査を通過するための準備に取り組んでいきましょう。
一方で、再申請しても融資を受けられる可能性が極めて低いケースも存在します。
【融資を断られて再申請が難しいケース】
- 消費者金融から多額の借り入れがある
- 債務超過している
- 税金や公共料金を滞納しており、支払いの目処も立たない
- 意図的に虚偽の報告を行った
- そもそも確定申告をしていない
上記のようなケースでは、融資を受けるのではなく、自己資金を確保する必要があります。
銀行融資以外の資金調達の方法とは?
銀行融資を受ける目処が立たない場合は、融資以外の方法を検討してみましょう。
ここでは、よりスピード感を持って資金調達が可能な方法をご紹介します。
ビジネスローン
ビジネスローンとは、事業用資金を用意するためのローン商品です。借入資金の使途は事業用に限定されており、一般的なローンとは大きく異なります。
主に新規事業や設備資金や運転資金に活用されます。事業に関することであれば利用可能で、細かな使途は定められていません。
スピード融資が実現しやすく、無担保・無保証人で借り入れしやすいのがメリットです。一方で銀行融資よりも金利が高い点がデメリットになります。
手形割引
手形割引とは、手形を支払期日より前に銀行等に持ち込んで、現金に変えてもらうことです。手形の額面金額から支払期日までの金利や手数料を差し引いた金額を受け取ることができます。
手形は発行時に銀行の審査を受けるため信頼度が高く、現金化するうえで手数料を安く抑えることが可能です。また貸金業法が適用されるため、金利の上限は20%と定められています。
ファクタリング
ファクタリングとは、利用者が保有している売掛債権をファクタリング会社に売却(買取)し、期日よりも早いタイミングで資金化できる金融サービスのことです。ファクタリングは売掛債権を売買するため、審査対象としては売掛先が重視されます。
そのため利用者が赤字経営や滞納歴があったとしても、売掛債権の信用度の高さを活かして現金化が実現するのが魅力です。
最短で翌日入金が可能なファクタリング会社もあることから、目先の資金が足りないような緊急な状況でもおすすめです。
複数の融資を組み合わせてリスク減少を図ろう
銀行融資は審査が厳しい傾向にあり、断られてしまうことで資金調達の方法に目処が立たないと悩んでしまいがちです。
ビジネスローンやファクタリングのように、銀行融資以外にも資金調達する手段は存在しており、経営者の個人名義での借り入れも検討の余地があります。
銀行融資の審査に通りやすい状況を作っておくだけでなく、資金調達のための手段を把握してリスクを減少させることが大切です。
融資を受けなければ会社が倒産してしまうような財務状況であれば、金融機関の側も融資を渋るのは当然です。銀行融資以外の方法で資金調達を行ったほうが、時間を浪費することなく、次の一手を打つことができます。
中長期的な経営体制の再建を図りながら、目先の資金繰り改善のために複数の資金調達手段を併せ持っておくことが、リスクを減少させる経営につながるでしょう。
まとめ
銀行融資を断られてしまう理由は様々ですが、断られてしまった場合はその理由を明らかにして、改善策を提示することが必須です。
ただし自己資金が乏しかったり、信用情報に傷がついていたりすると、融資を受けるのは難しいでしょう。
銀行融資以外の資金調達の手段も抑えておきましょう。会社の経営状況に上振れや下振れが起こったとしても、複数の融資先を確保しておけば、早急に焦ることなく意思決定を行えることにもつながります。
また銀行から融資を断られたとしても、ファクタリングやビジネスローンといった資金調達の方法も検討してみてください。