資金繰りが厳しい中小企業が最初にすべきこと

「資材価格の高騰で資金繰りが厳しくなってきた」
「資金繰りが厳しくなったら何から手を付けるべか知りたい」

企業として順調に経営を行っていても、不慮の事故や社会状況の変化により、急激に資金繰りが厳しくなるケースは考えられます。こうした資金繰りが厳しい状況になった場合、経営者として何をすればいいのか、知っておくことは非常に重要です。

そこで企業経営者として、資金繰りが厳しくなった場合に、まず何から取り組むべきか、そしてどのような手順で経営を立て直すべきかに関して、簡単に解説していきましょう。

資金繰り改善への基本的な考え方

資金繰りが厳しい企業は、何より経営全体をしっかり見直す事が重要になります。そのためには踏むべきステップがあり、しっかりと順序だてて対策していかなければいけません。

まずは資金繰りがどの程度厳しいのかという現状を把握し、資金繰り改善に向けて現金を手元にある程度準備します。ここまでしっかり対策したうえで、利用している金融機関や、企業経営の専門家に相談し、その後の経営改善に取り組むというのが基本的な考え方です。

それぞれのステップにおいて、企業がやるべきことなどを解説していきましょう。

現状を把握する

まずは何より現状把握が重要です。単に資金繰りが厳しいといっても、その理由がどこにあるのか、またどの程度厳しいのかを知ることから始めましょう。

そのために有効になるのが資金繰り表の作成です。資金繰り表とは、現状分かっている現金の支出と収入をまとめた表であり、現状その企業における現金の流れを見える化するための表です。通帳や会計帳簿などを基に作成し、毎月どのタイミングで出金が必要で、どのタイミングで収入があるかなどを把握しましょう。

この資金繰り表を作成することで、自社がどの程度資金繰りに苦しんでいるかがはっきりします。場合によっては資金ショートが発生するタイミングも見える化できますので、現状把握には最適と言えるでしょう。

現金を用意する

資金繰り表を作成するなどして、現状をしっかり把握できたら次は現金の準備です。現金の準備としてはいろいろな方法が考えられます。

priority 在庫の整理
priority 人権費や光熱費の削減
priority 支払い方法の変更

現金の用意といっても、自社が持っている何かを売り捌くだけが方法ではありません。支出を抑える、また遅らせることでも現金をプールすることは可能です。

まず重要になるのが在庫のチェックです。不要に在庫を持ちすぎていないかなどを確認し、不要な分を整理することで手元の現金を増やすことができます。

支出を抑えるという点では、人件費や光熱費など固定費の見直しが考えられます。いきなり人員削減というのは難しいかもしれませんが、派遣社員やパート、アルバイトを活用している企業であれば、ある程度削減も可能でしょう。すぐにできる対策としては光熱費を抑えたり、細かな経費削減につながる対策です。コピー用紙を必ず両面使うなどの対策だけでも効果はありますので、見直せる点がないかを検討しましょう。

最後に支払い方法ですが、これは一時的な対策となります。各種支払いにおいて、クレジットカード支払いが可能であれば、カード決済にすることで1ヵ月程度支出を先送りにすることが可能です。ただし、あくまでも一時的な対策となり、根本的な資金繰り改善とはなりませんので注意しましょう。

専門家や金融機関に相談する

自社内で対応できることに対応したら、あとは専門家や金融機関に相談するのがおすすめです。特に金融機関に相談するというのが現実的でしょう。自社の現状と資金繰りの現状をしっかりと説明し、資金繰り改善に向けた計画などを基に相談することで、資金融資につながる可能性があります。

資金融資が難しいと感じる場合は、企業経営コンサルタントや中小企業診断士など専門家に相談する方法もあります。資金融資を受けるために必要な対策や、利用できる補助金・助成金に関するアドバイスをもらえるかもしれません。

こうした資金融資やアドバイスを基に、しっかりと企業経営を見直し、資金繰り改善に取り組むというのが基本的な流れとなります。

資金繰りが厳しい中での現金調達法

資金繰りが厳しいという状況で、もっとも難しい手順が「現金を用意する」という部分でしょう。企業として不動産を所有している、株を所有しているなど資産があれば、こうした資産を売却することで現金を用意することは可能です。しかし、すべての中小企業がこうした資産を持っているわけではありません。

では現実的にどのような考え方で、どのような方法を選択すべきかを考えてみましょう。

借り入れを増やすのは難しい

現金を用意するとなると、銀行等からの資金融資やビジネスローンなどが真っ先に思い浮かぶかもしれません。しかし、こうした融資やローンはすべて借り入れとなります。そもそも資金繰りが厳しい状況にある企業が、こうした借り入れ契約の審査に通るのは簡単ではありません。

資金繰り改善の最終段階としては資金融資等がもっとも効果的ではありますが、まずは借り入れ以外の方法で現金を準備することが重要です。そのために在庫の整理を行ったり、固定費を見直すということになりますので、融資等の借り入れを行う前に、別の方法で現金を用意することをイメージしましょう。

ファクタリングを有効活用する

不動産や株式などの資産がなく、在庫の整理や固定費の見直しだけでは現金が確保できないという場合、考えたいのがファクタリングという方法です。

ファクタリングとは、手元にある売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、売掛金を早期現金化する方法です。ファクタリングの細かな仕組みは次の項で解説しますが、ファクタリングは売掛債権を譲渡した対価として現金を受け取る契約ですので、債権譲渡契約であり借り入れ契約とはなりません。

そのため資金繰りが厳しい状況でも、債務超過でも赤字経営でも利用できるケースがあり、非常に有効な現金調達法と言えるでしょう。形としては不動産や株式を売却するのと同じく、売掛債権という資産を売却して現金化する方法となります。

ファクタリングの基本的な仕組み

ファクタリングは借り入れ契約ではなく債権譲渡契約です。その仕組みに関してさらに詳しく解説していきましょう。また、利用における注意点なども同時に解説していきます。

借り入れ契約ではない

ファクタリングとは、売掛債権を譲渡して現金を得る資金調達法です。これが借り入れ契約のように誤解されるのは、売掛金が入金されたタイミングで、その売掛金をファクタリング会社に入金する必要があるからでしょう。

この手順は主に2社間ファクタリングで発生しますが、その仕組みと、売掛金の送金が返済とはならない理由を解説します。

ファクタリングを利用する場合、まず申し込み企業が売掛債権をファクタリング会社に持ち込みます。そのうえで審査を経て契約条件が決まり、その後契約を結びます。契約を結ぶと、契約内容に基づき売掛金から手数料を差し引いた金額が申し込み企業に支払われます。

この債権譲渡契約の際、債権の持ち主は申し込み企業からファクタリング会社に移行するため、取引先から支払われる売掛金は、ファクタリング会社が受け取るべきものになります。しかし、契約上売掛債権の内容は変更されないため、売掛金は申し込み企業と取引先が契約した通りの期日までに、申し込み企業の口座に振り込まれるわけです。申し込み企業はファクタリング会社の代理として売掛金を受け取り、その後その売掛金をファクタリング会社に送金する形となるわけです。つまり返済ではなく送金であり、ファクタリングは借り入れ契約ではないということになります。

借り入れ契約ではないため、自社の信用情報に影響は出ませんし、赤字経営でも債務超過でも、また資金繰りが厳しい状況でも利用できる可能性がある資金調達法となるわけです。

手数料の考え方

ファクタリングを利用する場合、手数料というものが発生します。申し込み企業は売掛金からこの手数料を差し引いた金額を手にすることになります。ファクタリングの際の手数料にはある程度の相場が存在します。

emoji_objects 2社間ファクタリングの手数料 10~30%
emoji_objects 3社間ファクタリングの手数料 1~9%

契約の形によって差がありますが、一般的に利用されることが多い2社間ファクタリングでは、10~30%が相場となります。手数料は契約するファクタリング会社、また申し込む売掛債権によって変動しますので、複数のファクタリング会社から相見積もりを取って、より手数料が安いファクタリング会社を見つけるのがおすすめです。

依存しすぎないように注意する

ファクタリングは債権譲渡契約を結び、売掛金を早期現金化する資金調達法です。言い方を変えれば、売掛金の前払いシステムともいえます。

そのため本来売掛金を受け取れるタイミングでの入金がなくなることを意味します。この売掛金入金のタイミングでの資金繰りをしっかり考えておかないと、そのタイミングで再度ファクタリングを利用しないと資金繰りが回らないという事態が発生しかねません。

また、ファクタリングを利用する際は手数料が発生します。仮に額面金額100万円の売掛債権で、手数料が10%だとすれば、手数料が10万円必要ということです。これはどういうことかというと、100万円分の商品もしくはサービスを納品したのに、入金が90万円になるということです。ファクタリングの手数料とは、申し込み企業にとって純粋な損失となるわけです。

ファクタリングを利用し続ければ、当然この損失はどんどん増えていきます。危険なのはファクタリングに依存しないと資金が回らなくなってしまうことでしょう。

ファクタリングは資金繰り改善のための現金確保のためなど、資金繰りが厳しいタイミングでのみ活用すべきと考え、ファクタリングによって手元の現金に余裕があるタイミングで、金融機関や専門家に相談し、根本的な解決ができるよう立て直していくことがおすすめの活用法といえます。

まとめ

資金繰りが厳しいのであれば、何より経営改善を行うのが重要です。

そのためにはまず資金繰り表を作成して現状を正確に把握することから始めましょう。自社の現状を把握したら、その改善を目指します。そのためにはある程度の現金が必要となるケースもありますので、在庫の整理や固定費の見直し、そしてファクタリングなども上手に活用して現金を確保しましょう。

現金がある程度確保できたら金融機関等に相談するのがおすすめです。資金融資を受ける、行政の補助金や助成金を活用するなどできる方法を模索し、自社の経営が安定するよう、長期的な視野で経営計画を立てるのがおすすめとなります。

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