
「日本政策金融公庫って中小企業でも利用できるの?」
「日本政策金融公庫の金利ってどの程度なの?」
事業資金を調達したい中小企業にとって、日本政策金融公庫は有力な選択肢のひとつです。
日本国内の中小企業や小規模事業者、そして農林水産事業者を支援するため、比較的低金利で事業資金などを貸し付けているのが日本政策金融公庫です。
では、その日本政策金融公庫からの借入金利はどの程度なのか、実際に高いのか安いのかという点を中心に解説していきましょう。
日本政策金融公庫とは?
日本政策金融公庫は財務省管轄の特殊会社となります。前身はかつて存在した「国民生活金融公庫」、「農林漁業金融公庫」、「中小企業金融公庫」であり、これらで扱っていた業務を一括で引き受ける機関となっています。
特に中小企業にとっては、低金利で運転資金や設備投資費用を借り入れることができる機関であり、経営上なくてはならない機関といえるでしょう。
日本政策金融公庫の中小企業向け融資の金利
日本政策金融公庫では、比較的低金利による貸し付けを行っています。貸し付け対象は中小企業を始め、個人事業主や農林水産業者など幅広く、貸し付ける対象や条件などによって金利もさまざまです。
融資条件によって細分化されている
日本政策金融公庫の貸付金利は、貸し付け条件により細分化されています。その代表的な例をいくつか紹介していきます。
まずは「国民生活事業」として、主に小規模事業者や創業企業を対象とした貸し付けの金利を紹介しましょう。
融資の種類 | 担保 | 貸付基準金利 | 特別利率 |
---|---|---|---|
新創業融資 ※税務申告を2期終えていない企業 | なし | 2.80~4.20% | 1.40~3.80% |
税務申告を2期終えている企業 | 担保あり | 1.70~3.70% | 0.80~3.30% |
担保なし | 2.70~4.10% | 1.65~3.70% | |
災害貸付※ | 要相談 | 1.80~3.20% | 0.80~2.80% |
※東日本大震災復興特別貸付(震災セーフティネット関連を除く)・令和2年7月豪雨特別貸付(その他被害者を除く)・令和6年能登半島地震特別貸付(その他被害者を除く)
参照:日本政策金融公庫 主要利率一覧表(令和7年7月1日現在)
URL:https://www.jfc.go.jp/n/rate/index.html
続いて特に中小企業を対象とした貸し付けの金利も紹介します。中小企業を対象とした貸し付けは、長期貸し付けが中心となり、貸付期間により金利が変動します。
貸付期間 | 基準金利 | 特別金利 |
---|---|---|
6年以内 | 1.85% | 0.95~1.45% |
6年超~8年以内 | 1.95% | 1.05~1.55% |
8年超~9年以内 | 2.05% | 1.15~1.65% |
9年超~11年以内 | 2.15% | 1.25~1.75% |
11年超~12年以内 | 2.25% | 1.35~1.85% |
12年超~13年以内 | 2.35% | 1.45~1.95% |
13年超~15年以内 | 2.45% | 1.55~2.05% |
15年超~16年以内 | 2.55% | 1.65~2.15% |
16年超~18年以内 | 2.65% | 1.75~2.25% |
18年超~20年以内 | 2.75% | 1.85~2.35% |
参照:日本政策金融公庫 主要利率一覧表(令和7年7月1日現在)
URL:https://www.jfc.go.jp/n/rate/base.html
特別利率にはさまざまな種類があります。また基準金利に関しても、あくまでも基準となる金利であり、必ずその金利になるというわけではありません。実際の金利は担保の有無や貸し付けリスクを審査した結果決定する形となります。
金利を最終的に決定するのは日本政策金融公庫
日本政策金融公庫の金利決定のプロセスに関しては、詳細は発表されていません。申し込みに必要な書類を揃えて提出し、その書類から日本政策金融公庫が独自で審査を行い、最終的な金利を決定します。つまり、借り入れる事業者の側が、金利を決めつけて申し込めるわけではないということです。特別金利が適用されるかどうかも日本政策金融公庫の判断によるものとなります。
日本政策金融公庫の貸し付けに関しては、専門家の意見を聞くことがおすすめです。税理士に頼る方法もありますし、日本政策金融公庫の窓口で相談する方法もあります。
他の金融機関等と金利を比較すると?
では、実際に日本政策金融公庫以外の金融機関から借り入れた場合と比較して、金利は安いのか高いのかという点を解説していきましょう。
銀行や事業者向けローンよりは安いと考えていい
日本政策金融公庫以外で借り入れをする場合にも金利がかかります。すべての金融機関の金利を網羅することは難しいので、あくまでも一般的な金利の相場としていくつか紹介していきます。
借入先 | 金利相場 |
---|---|
信用保証付き 銀行融資 | 1.5~3.0% |
不動産担保ローン | 2.0~11.0% |
ビジネスローン | 2.0~18.0% |
銀行融資(メガバンク) | 1.0~4.0% |
地方銀行や信用金庫 | 2.0~6.0% |
繰り返しになりますが上記の表はあくまでも目安です。中には日本政策金融公庫とさほど変わらない金利の商品もあります。
ただし、大きく違うのは借入先が銀行か日本政策金融公庫かという点です。銀行と言っても営利企業に変わりはありませんので、基本的に利益が出る場合にしか貸し付けは行いません。一方日本政策金融公庫は、財務省が中小企業などの活動を支えるために存在している特殊会社であり、目的は営利ではなく企業の支援です。
つまり、日本政策金融公庫の方が積極的に貸し付けを行う傾向にあるということです。言い方を変えれば審査の条件が緩いと考えられます。営利目的である銀行で、日本政策金融公庫と同等の条件で借り入れをしようと考えた場合、より審査は厳しくなるでしょう。
そう考えると、日本政策金融公庫の貸し付けは、より低金利であると考えられます。
条件が合わないのであれば融資に頼らない方法も
日本政策金融公庫は、比較的融資を受けやすく、また金利も安い傾向にあります。とはいえ借り入れることに違いはなく、少ないとはいえ金利とともに返済をしなくてはいけません。また、借り入れを申し込むには細かな条件があり、その条件を満たさない限り借り入れを行うことはできません。
企業として資金調達を考えた場合、融資に限らずいくつかの方法があります。こうした方法に関して簡単に紹介していきましょう。
日本政策金融公庫からの融資以外でおすすめの資金調達法
借り入れに頼らない資金調達法としては、株式会社であれば株式を発行するという方法があります。株式を発行し、株主が集まれば自然と資金は集まります。しかし、株式を発行するといっても、発行すれば必ず売れるというものではありません。株主がその会社に魅力を感じて投資をしてくれなければ、いくら発行しても資金は集まりません。将来性があるなど、一部限られた企業のみができる方法といえるかもしれません。
他には自社がもつ財産を売却して資金を得るという方法があります。不動産を所有している、株式を所有しているということであれば、こうした自社の財産を売却し現金化することで資金調達は可能です。
ただし、株式に関しては売り抜けるタイミングを間違えればマイナスになってしまいますし、不動産の売却に関しては購入者を見つける必要があります。時間がかかるなどのデメリットもあり、即効性という点では疑問が残るのは確かです。
そんな財産の売却という点でおすすめしたいのがファクタリングです。
ファクタリングとは?
ファクタリングとは、手元にある売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、売掛金を入金期日前に現金化するという資金調達法です。ファクタリングに関しては、中小企業庁がHPで利用を推奨しており、安心で合法な資金調達法です。欧米各国ではより積極的に活用されている資金調達法であり、日本国内でも利用企業が増加傾向にあり、おすすめの資金調達法と言えるでしょう。
借り入れではないので安心
ファクタリングは上記の通り、売掛債権を売却して、その対価として現金を受け取るサービスです。つまり借り入れではないということになります。借り入れではないので会社の信用情報に影響はありませんし、なにより返済の必要がありません。
ファクタリングによって借入金を縮小できれば、むしろ自社の信用情報は高まり、より銀行融資等の審査にも通過しやすくなるでしょう。また、売掛債権を現金化することで、キャッシュフローの改善という効果も期待できます。
審査に通りやすく多くの中小企業が利用可能
ファクタリングを利用する場合も、融資時と同様に審査が行われます。融資審査の場合は、長期間にわたって返済ができるかどうかという点が重視されますので、申し込んだ企業の経営状況や財務状況に注目が集まり、経営が厳しい状況だと、審査通過が難しくなります。
一方ファクタリングで審査されるのは売掛債権に関してです。申し込み企業が持ち込んだ売掛債権が確実に現金化されるかどうかが最大の注目点であり、申し込み企業の経営状況や財務状況はそこまで重視されません。実際に債務超過の企業や、赤字経営の企業でもファクタリングを利用した実績があり、多くの中小企業が利用できる資金調達法です。
ファクタリングの注意点
比較的利用しやすく、借り入れ契約ではない資金調達法であるファクタリングですが、利用するにはいくつか注意点があります。その注意点に関して代表的なものを2つ紹介しましょう。
手数料を支払う必要がある
ファクタリング利用時には手数料が発生します。2社間ファクタリングで10~30%程度、3社間ファクタリングで1~9%程度が手数料の相場であり、その分売掛金から差し引かれるのが一般的です。
ファクタリングを利用する際は、複数社から相見積もりを取り、より有利な条件で契約できる会社を探すのがおすすめです。
売掛金入金日周辺の財務状況に注目
売掛金を早期現金化できるのがファクタリングですが、反対に言えば売掛金の入金予定日には、入るはずの金額が手に入らないという事でもあります。そのため申し込み前に売掛金入金予定日周辺の財務状況をしっかり予測し、入金日に現金が入らなくて困るようなことがないようにしましょう。
まとめ
日本政策金融公庫は、財務省が中小企業などの経営活動を支えるために存在している特殊会社です。そのため多くの中小企業がその制度を利用し事業資金などを借り入れています。一般的な銀行や事業者向けローンと比較すると、審査はやや通りやすくまた金利が安いという特徴があります。
ただし、融資である以上審査はありますし、また借り入れた後は金利とともに返済する必要もあります。日本政策金融公庫からの融資が受けられなかった場合は、その時点で諦めるのではなく、ほかの方法で資金調達を目指しましょう。
おすすめは借り入れではないファクタリングという方法です。ファクタリングを上手に活用しキャッシュフローを建て直せば経営も軌道に乗るでしょう。そうなれば改めて日本政策金融公庫などに融資を申し込めるかもしれません。
資金調達法の一つとしてファクタリングという方法があることを知り、その特徴を学んでおくことをおすすめします。