売掛金を売却して資金を調達する「ファクタリング」は、売掛金を買取る「ファクタリング会社」ごとに買取価格の差が生じます。
身近にある売買市場で中古車を例に挙げると、中古車買取専門店、中古車販売の下取り、カーディーラーの下取り、オークションでの個人売買など、中古車を売却できるプラットフォームやその方法は非常に多くあります。
中古車の買取相場という言葉を耳にされたことはあるかと思いますが、買取相場と査定時の買取価格に差が生じることがよくあります。また査定を依頼した買取店によっても買取価格のズレが生じるのでしょう。
「ファクタリング」も中古車買取市場と似た性質を持ち合わせています。
今回は、売掛金の買取価格に数万円~100万円単位で差が出る理由について、チョウタツ王が解説していきます。
登場人物紹介
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チョウタツ王
中小企業経営者を支援する資金調達界の救世主。
ファクタリングを世に広めるため日々活動中。 -
ヒロコ
チョウタツ王のもとで助手として働く。
ファクタリングについて日夜研究中。 -
皆川社長
東京都内で建設会社を営む2代目社長。
仕事にかける情熱と社員を大切に想う心は人一倍だが…。
目次
売掛金の買取と中古車の買取には共通点がある?!
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ジャジャーーン!
ヒロコちゃーん、どうよこの車?!
すっごくカッコイイィィッしょ!!
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スゴーイ!
めっちゃカッコイイイですね―♪
皆川社長、車を買い替えたんだー!! -
そうなんだよ、ヒロコちゃん!
前に乗ってた車もそこそこ乗ったから買い替えかなって思って。
ちょうど車を査定に出したら、相場と同じくらいだったし、奮発してスポーツカーにイメチェン♪ -
皆川社長も「渡社長」と一緒で買い替えってすごいタイミング!
なんだかんだ言っても意外と仲良しなんですねー、お二人♪
車も同じようなタイプだし。 -
は?!
ヒロコちゃん、アイツも車買い替えたの???
しかも同じような車ぁぁ?!!!
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そうですよ。
前の車を査定に出したら150万円の買取額がついたみたいで、それで買い替えたって、渡社長が言ってました。 -
えっ、150万円も?!
僕も渡と同じ車で、しかも同じ時期に買ってるのに、僕が買取ってもらった価格よりも50万円も高いって!! -
まったく騒々しいわい!
皆川社長、車がどうたらとどうしたんじゃ?
またなにかトラブルでも起こしおったのか?? -
チョウタツ王ーー!
ちょっと聞いてくださいよー。
こないだ中古車買取専門店に売却した車の買取価格が、渡が売った車の買取価格より50万円も低かったんですよ。 -
あーそういば、渡社長が車を買い替えたとか言ってったなぁ。
渡社長は商売上手じゃから、査定も抜け目なかったんじゃろ。
相場よりも高く売れたと言っとったしな。 -
10社ぐらいに査定をしてもらったって言ってましたよ。
なかでも一番高値を付けた買取会社と一番安値を付けたとこで50万円も違かったみたい。 -
皆川社長ももちろんいくつかの買取会社に査定を出したんじゃろ?
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え? 出してませんけど。
結局はどのお店も買取価格は一緒みたいなもんでしょ。
だから1社しか査定は頼んでないですよ。 -
えーー。
皆川社長、前にも言ったじゃない。
中古車の買取査定と、売掛金の買取査定も買取る会社によって査定の基準がければ、得意不得意があるから何社か査定したほうが好条件で高額買取が見込めるわよって。
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うわちゃー!!!
すっかり忘れてた、その話し。 -
ほんと、そそっかしいのう。
ヒロコの言うとおりじゃぞ、皆川社長。
しっかりした専門知識を持って査定ができれば、適正な買取価格を提示するじゃろうし、またその車種やタイプを専門的に取り扱ってる買取会社であれば、車の価値にプラスアルファの値段をつけるじゃろうしな。
面倒かもしれんが、渡社長のように査定を何社にも出すから、良い条件で車を売却できるものなのじゃ。 -
ファクタリングをするときに一番良い条件で売掛金を売るならって、チョウタツ王から教わったでしょ。
ファクタリングもファクタリング会社によって、買取の基準だったり、知識や経験、得意な業種、不得意な業種があるから、できれば売掛金も複数社に見積りをしたほうが良いってね。
ファクタリング会社が負う売掛金の買取リスク「償還請求権」って知ってる?
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そもそもじゃな、ファクタリングを利用した資金調達も、中古車を売却して現金を手にするにも、実は買取手側の「買取リスク」というものが査定に大きく影響してくるのじゃ。
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「買取リスク」ですか?そういえば、売り手側の立場でしか物事を考えていなかったから、買い手側のリスクって深く考えてませんでした。
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ファクタリングの場合は買取ってもらった売掛金が入金されたら買取代金を支払えば良いだけで、中古車の場合は車をちゃんと引き渡せば、買取リスクなんてないんじゃないの?
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今回はせっかくじゃから、売手ではなく、買い手側の立場になって、なぜ売掛金の買取額に差が出てしまうのか、その理由を説明していこうかのう。
二人とも、そもそも売掛金や商品、物を買取ることを生業としている買取業者の収益、売上はどうやってできると思うかね? -
そうね…、ファクタリングの場合は、売掛金の額面と買取った代金の差額(手数料)が、買い手側となるファクタリング会社の売上になるんじゃないかしら。
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中古車を買取る場合は、買取った車を買取価格以上で販売するから、それが売上になるんじゃないかな?
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二人とも正解じゃ。ではな、双方に言えるものじゃが、どちらも買取った後のリスクってなんじゃ? 二人とも分かるか?
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そうねぇ……。
売掛金を買取ったまでは良いけど、売掛先から期日通りに売掛金の入金が無かった場合がリスクになると思います。
不謹慎なことだけど、例えば売掛先が倒産しちゃったりとか。 -
ファクタリングだったらヒロコちゃんの言うとおりだよね。
これが中古車だったら、例えば査定の時に見落としがあって車が思ってた以上の価値が無くて高値で売れないとか、最悪は買取額よりも売却額が下回っちゃうことも考えられるよなぁ。 -
同じ買取市場であっても取り扱う商品が違うわけじゃから、一概に答えが同じとはならんが、根本の部分はお金が入らなければ、どちらも売上にはならんことじゃな。
いっくら商品を買取ってもその商品の価値が無ければ、買い手側にとっては損失=リスクとなるわけじゃ。 -
でもさ、チョウタツ王。
中古車の場合は、最悪は買取価格よりも低い価格で車を手放すこともできるだろうけど、ファクタリングは売掛金を買取るわけだから、その場合はどうなの? -
そこが売掛金を買取るファクタリング市場と中古車買取市場の大きな違いになるんじゃ。
ほとんどのファクタリングの場合は、「償還請求権が発生しないファクタリング取引(ノンリコース)」が多いんじゃよ。 だから万が一、売掛先が倒産でもして売掛金の入金が無かったなんてことがあったら、売掛金を買取った代金の損失はファクタリング会社が全て負うことになるのじゃ。 -
じゃあそれとは逆に「償還請求権が発生するファクタリング取引(ウィズリコース)」ってどういうものなんですか?
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償還請求権が発生するファクタリング取引は、日本ではあまり馴染みのないものになるんじゃが、売掛先が倒産した場合でも売金を売却したファクタリング利用者が、その売掛金の買取代金を支払わなければならないという決まりがあるのじゃ。
この取引のリスクは売り手側にあるのじゃが、そのぶん買取額が高くなるメリットがある。
ただ、入金が為されなかった場合は、売り手側に買取代金の回収が来るわけじゃから、最悪の結果はその代金の都合が付かずに連鎖倒産というリスクが出てくるのじゃ。 -
その償還請求権っていうのをまとめるとこうなるわけだ。
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この償還請求権が有るか無いかで、買い手側のリスクが変わるから、売掛金の買取額に差が出るということね。
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なるほどねー。
リスクが保証されれば高く買い取れるし、リスクが保証されなければ高く買い取れないわけだ。
どっちも互いにメリットもデメリットもあるもんだなぁ。 -
二人ともよく理解できたようじゃのう。
ただな、償還請求権の問題以外にも、売掛金の買取額に差が出る理由があるのじゃよ。
もう一つの買取リスク「2社間」「3社間」の取引方法の違いで売掛金の買取額が変わる
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あ、思い出しました、その理由!
売掛金の買取額に差が出るもうひとつの理由ってアレですよね?! -
………。
ヒロコちゃん、アレってなんだっけ? -
皆川社長も前にチョウタツ王から教えてもらったでしょ!
「3社間取引」と「2社間取引」の取引方法の違いよ。
まさか忘れちゃったの? -
ま、まさかー、覚えてたし知ってるよ(汗)
そうそう「3社間」と「2社間」のファクタリング取引ね! -
そのとおりじゃ。
ファクタリングを行う場合に、この「3社間ファクタリング」と「2社間ファクタリング」では売掛金の買取額に大きな差が出るのじゃ。
買い手側となるファクタリング会社は、この取引方法によっても買取リスクが変わるから、重要なポイントと言えるじゃろう。 -
「ファクタリング利用者」「売掛先」「ファクタリング会社」の3社間で取引するファクタリングは、売掛金をファクタリング会社へ売却する旨を利用者が売掛先に承諾を取って売買をするのよね。
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ああそうじゃ。
売掛金の入金期日になったら売掛先が利用者ではなく、ファクタリング会社に売掛金の支払いをするんじゃ。
そうすることでファクタリング会社のリスクは減るんじゃがの、利用者は売掛先に売掛金で資金調達をすることを事前に告げなければなんのじゃ。 -
いやー、でも売掛先に資金繰りが厳しいって思われたら、信用が落ちちゃうよ。
商売やってるとその辺ってけっこうシビアな問題でしょ。 -
皆川社長は、資金繰りの問題以前に仕事先でトラブルばかり起こしてるから、信用なんてほとんどないじゃない(笑)
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ヒドイこと言うなー、ヒロコちゃん!
こう見えても俺だって取引先には信用がアツいんだから。
でも取引先との関係性を考えたら「2社間」が一番良いよね。 -
利用者からしてみれば、確かに「ファクタリング利用者」と「ファクタリング会社」だけで取引を行う、2社間ファクタリングのほうが魅力的かもしれないがのう。
ただ、売掛金を買取る側となるファクタリング会社からしてみたら、万が一、利用者が倒産した場合もそうじゃが、入金された売掛金を別の支払いに充てられた場合はどうじゃ? -
その場合は、ファクタリング会社は売掛金の買取代金を回収できなくなるリスクが増えますね。
そうなると……。 -
……売掛金の買取額が低くなるわけだ。
リスクの保証が無いぶんだけ、ファクタリング会社は売掛金の買取に資金を出しづらくなるということか。
項目 | 2社間 ファクタリング |
3社間 ファクタリング |
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売掛先への通知 | なし | あり |
売掛金の入金先 | 利用者の銀行口座 | ファクタリング会社の銀行口座 |
債権譲渡登記 | 必要に応じて | 必要に応じて |
手数料 | 10%~30% | 3%~10% |
売掛金の代金回収 | 利用者 | ファクタリング会社 |
入金までの期間 | 即日~1週間程度 | 即日~売掛先承諾まで |
審査の柔軟さ | 融資より緩い | 2社間より緩い |
総 評 | 売掛先への通知は不要だが3社間に比べ買取額が低い | 審査が緩く買取額が高いが売掛先へ通知が入る |
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「2社間ファクタリング」と「3社間ファクタリング」の違いもそうじゃが、ファクタリングは取引方法によって買取時の手数料が変わるから、買取額に差が出るものじゃ。
売掛金を査定するファクタリング会社によっても買取額に差があるものじゃから、査定は複数社へ依頼をすることが、一番条件の良い答えがみつかるぞい。 -
中古車の売却も、売掛金の売却も、どちらもトクするためには複数社に査定を依頼するのがベストってことですよね。
皆川社長、分かりましたか?! -
はぁ……。
俺も車を売るときにしっかり査定をしとくべきだったー。
次に車を売るときはソンしないように気を付けよう…トホホ…。
今回のまとめ
売掛金の買取方法によってはファクタリング会社の査定で数万円~100万円単位の買取額の差が生まれる
「売掛金の買取額に“差”が出る」。ファクタリングの査定項目の一つに、“売掛先の入金リスク”があります。
これは、ファクタリング会社が売掛金(売掛債権)を買取り後に、売掛先(取引先)が倒産などの理由で売掛金の回収ができなかった場合、償還請求権が発生しない(ノンリコース)の売掛金譲渡契約を締結しているため、ファクタリング会社が一切の責任を負うということです。
そのため、ファクタリング会社は回収ができない状況に陥らないために、売掛先の経営状況や過去の支払い履歴などをしっかりと調査します。
また、売掛金の買取り査定時に重要となるのが、売掛内容となります。なかでも売掛先の業種について、査定を行うファクタリング会社が必ずしもその業種に明るいとは限りません。請求書に記載されている専門用語や請け負った仕事の取引内容を精査した上で、買取額を算出するため、その業種の取引経験の有無でもファクタリング会社ごとに買取額の差が生まれるのです。
中古外国車の査定を例にするならば、外国車専門店と国産車専門店では、買取額に大きな差が生まれます。その理由としては外国車ならではの車両の特性や市場価値などを専門的な知識で総合的に判断し、適正な査定が行えるかどうかがポイントとなります。
ほかにもファクタリングは売掛金の入金リスクを取引方法(2社間、3社間)によって判断する点があり、買取額に大きく差が出る理由の一つとなります。
2社間取引のファクタリングの場合は、売掛先(取引先)を介入させずに利用者とファクタリング会社のみで売掛金の売買を行います。この場合は、売掛先からの入金は利用者が受け取り、ファクタリング会社へ買取代金を支払う流れとなりますが、万が一利用者が売掛金を使い込んでしまった(他の支払いで引き落とされてしまった)、利用者と連絡が着かなくなってしまった場合はファクタリング会社は支払いの遅延や回収不能というリスクを負うようになります。そのため3社間取引のファクタリングに比べると買取額が低くなります。
逆に3社間取引のファクタリングの場合は、売掛先(取引先)を介入させる売掛金の売買形態となりますので、売掛金の支払先は直接ファクタリング会社となります。売掛先が介入することにより、利用者の入金リスクは無くなりますので、2社間取引のファクタリングと比べて売掛金の買取額は比較的高く、審査も緩くなります。ただし、売掛先にファクタリングで資金調達を行う旨の承諾を得なければ取引ができないため、資金繰りが悪化していると見られてしまう可能性もあります。
ファクタリングの取引方法や、査定を行うファクタリング会社の特性によっては、売掛金の額にもよりますが数万円~100万円単位の買取額の差が開くケースもあります。
売掛金の売却を行う場合は、ボーダーラインを事前に決めて条件に見合った取引を選択し、複数社への査定依頼をすることが、少しでも多くの資金調達ができる近道となるでしょう。