
近年ファクタリングを利用する企業は増えています。しかし、ファクタリングの利用を躊躇してしまうという経営者の方がいるのも間違いない事実でしょう。
躊躇する理由としては、取引先に知られてしまうリスクがあるからではないでしょうか?
取引先に無断でファクタリングを利用することはできるのか、その行為は合法的な行為なのかという点を中心に解説していきましょう。
また、同時に取引先に知られるリスクや、知られた場合に考えられる事態に関しても解説していきます。
ファクタリングが合法である法的根拠
まずは、そもそもファクタリングが合法なものであるという点から解説していきます。
民法466条により合法となる
民法第466条では「債権の譲渡性」が規定されており、「債権は譲り渡すことができる」と書かれています。この債権には当然売掛債権も含まれますので、売掛債権の譲渡契約を結ぶファクタリングは合法であるということになります。
また、2020年の民法改正において、譲渡禁止特約がついている売掛債権に関しても譲渡が認められるとなったことで、売掛債権を取引先に無断でファクタリング会社に譲渡することは完全に合法となりました。
取引先に無断でファクタリングは可能か?
結論から言えば取引先に断ることなくファクタリングを利用することは可能です。
ファクタリングで取り交わされる債権譲渡契約というのは法的に言えば自由契約です。自由契約とは、売る側と買う側が合意していれば、自由な条件で契約できるものを指します。当然取引先に無断でファクタリングを利用するのは自由であり、法的に問題ないということになります。
とはいえ、ファクタリングにはさまざまな種類があり、取引先に無断で利用する場合には、特定の方法で利用する必要があります。
2社間ファクタリングであれば可能
取引先に無断で利用できるのは2社間ファクタリングという契約方法です。
ファクタリングを申込んだ企業と、ファクタリング会社の2社間で契約する方法であり、もっともメジャーな契約方法といえます。
2社間ファクタリングと3社間ファクタリング
取引先に無断でファクタリングを利用する場合には、2社間ファクタリングという契約方法を選ぶ必要があります。その他にも買取型のファクタリングには3社間ファクタリングという契約方法があります。それぞれの違いに関して簡単に説明しておきましょう。
2社間ファクタリングとは?
2社間ファクタリングは上記の通り、申し込み企業とファクタリング会社の2社で契約する方法です。申し込み企業が手持ちの売掛債権をファクタリング会社に持ち込み審査を受けます。審査の結果契約条件が提示され、その条件に問題がなければ契約を結びます。
契約が結ばれると、売掛金から手数料等を差し引いた金額がファクタリング会社から申し込み企業に振り込まれます。債権譲渡契約は結びますが、売掛債権内に明示された条件は変更されないのが2社間ファクタリングの特徴です。
そのため、売掛金入金日には、取引先から申し込み企業の口座に売掛金が入金されます。申し込み企業は売掛金が入金されたら速やかにその売掛金をファクタリング会社に送金して契約は完了です。
この流れを見ても分かる通り、2社間ファクタリングの場合、取引先には一切連絡がいきません。また、入金日や入金先口座も変更されないため、取引先はファクタリングの利用を知らない状態で契約が完了することとなります。
2社間ファクタリングを利用するメリットは現金化スピードの早さや、取引先に知られないことが挙げられます。申し込み企業とファクタリング会社の同意があれば契約が結べるため、最短であれば即日のうちに契約し現金を手にすることができるのは大きなメリットでしょう。また、取引先に情報が漏れないこともメリットと考えられます。
一方デメリットとしては手数料の高さが挙げられます。ファクタリングの手数料に法的な制限はありません。そのためあくまでも一般的な数字となりますが、おおよそ10~30%程度の手数料になるといわれています。
3社間ファクタリングとは?
3社間ファクタリングとは、申し込み企業とファクタリング会社に加え、取引先企業の3社の間で契約される方法です。
申し込み企業が売掛債権をファクタリング会社に持ち込み、審査を受けるところまでは2社間ファクタリングと同様です。審査に通過し契約できるとなった時点で、ファクタリング会社から取引先企業に債権譲渡通知が行われます。つまり、申し込み企業が3社間ファクタリングを希望しているため、売掛金の支払先がファクタリング会社に変更になることを通知するわけです。
この通知に対し、取引先が了承すれば契約に移ります。契約が締結されたら、ファクタリング会社から申し込み企業に、売掛金から手数料等を差し引いた金額が送金されます。
2社間ファクタリングと違い、3社間ファクタリングの場合は売掛金の送金先はファクタリング会社に変更されますので、申し込み企業はこの時点で契約に関しては完了ということになります。後は取引先がファクタリング会社の口座に売掛金を入金して完了です。
3社間ファクタリングのメリットは、手数料の安さです。2社間ファクタリングと比較すると、より売掛金の未回収リスクは低くなるため、手数料相場は安く1~9%程度となります。
デメリットは契約までに時間がかかるという点でしょう。取引先に了承してもらい、契約に参加してもらう関係上、即日現金化というのはまずできません。一般的には申し込んでから1~2週間程度で現金が入金されるため、現金化スピードという点ではデメリットとなります。
2社間ファクタリングの利用が取引先にバレた場合
2社間ファクタリングを利用して、取引先にファクタリングの利用が知られてしまった場合どのような事が考えられるのでしょうか。
最初に書いた通り、ファクタリングは合法的な契約であり違法行為ではありません。ただし、ファクタリングを利用したという事実がマイナス評価につながる可能性は否定できません。
取引先が「ファクタリングを利用するほど経営状況が良くない会社である」と認識してしまった場合、その後の取引が縮小していくことが予想されます。どんな企業でも経営状況の良くない会社と取引を続けることは望んでいないものです。
ファクタリングの利用を知ったことで、徐々に取引が縮小していけば、当然申し込み企業の経営にも影響が出るかもしれません。
2社間ファクタリングの利用が取引先にバレるケース
取引先にファクタリングの利用が知られることは、あまり望ましいことではありません。取引先がファクタリングに寛容であり、まったく気にしないというケースもありますが、そうではなかった場合、その後の経営に影響が出る可能性も否定できません。
では、2社間ファクタリングを利用して、取引先にファクタリングの利用が知られてしまうケースに関して考えてみましょう。
取引先が売掛金の支払いをしない場合
まず最初に考えられるのが、取引先が売掛金の支払いをしない、または遅れた場合です。ファクタリング契約を結んでいるため、その売掛金の債権者は申し込み企業ではなくファクタリング会社です。当然督促を行うのもファクタリング会社となり、この時点で取引先にファクタリングの利用が知られるということになります。
ファクタリング契約、債権譲渡契約においては、売掛金の未回収リスクは譲渡を受けたファクタリング会社が背負います。ファクタリング会社は未回収リスクを背負うものの、手数料という売上を手にすることができるわけです。一方申し込み企業は、手数料を支払うというリスクを背負う代わりに、未回収リスクからは解放されます。
契約内容に債権譲渡通知の項目がある場合
契約書のチェックポイントとして、債権譲渡通知という項目があります。債権譲渡通知を行うとしているファクタリング契約は、2社間ファクタリングでも取引先に債権が譲渡されたことが通知されます。これでは取引先に知られることになり、2社間ファクタリングのメリットがひとつなくなる事になってしまいます。
契約時には、この債権譲渡通知の項目に関してしっかり確認しておきましょう。
取引先が債権譲渡登記を確認した場合
ファクタリング契約では多くの場合、債権譲渡登記が行われます。これは、売掛債権が譲渡された事実を登記することで、債権の所有権をハッキリさせるための項目です。基本的に登記された内容は、第三者でも希望を出せば閲覧可能です。つまり取引先が登記所で閲覧を希望すれば、ファクタリングを利用していることが分かるということになります。
とはいえ、何の根拠もなく、いきなり登記所で閲覧を希望する企業はほぼありません。知られる可能性がある項目として紹介しましたが、まず知られることはないと考えていいでしょう。
取引先にバレることはほぼない
無断でファクタリングを利用したことが、取引先に知られるケースはここで紹介したケースくらいかと思います。
決論としては、まず知られることはないと考えていいということです。
もちろんそのためには、契約内容をしっかり確認してから契約するのが重要です。債権譲渡通知の項目さえ問題なければ、取引先に知られるリスクは0に近いといえます。
まとめ
取引先に知られることなくファクタリングを利用することは可能です。
ファクタリングで結ばれる債権譲渡契約は自由契約に含まれます。債権を持つ者と、買い取る者の両者が納得した条件であれば、自由に契約ができるものであり、債務者である取引先に報告しなければいけないという義務はありません。
ファクタリング自体は合法な資金調達法ですが、ファクタリングを利用したことがマイナス評価につながる可能性は否定できません。しかし、2社間ファクタリングを結んだ場合、取引先に知られるリスクはほぼありませんので、その点は安心して利用できる方法といえます。