医療ファクタリングってどんな仕組み? 医療業界ならではのメリットとは

医療ファクタリングという言葉をご存じですか?

ファクタリングは買取型と保証型に分けられますが、買取型の中でも特に医療業界で行われるものは医療ファクタリングと呼ばれています。
この記事では、医療ファクタリング固有の流れや仕組み、メリットなどについて詳しく解説していきたいと思います。

医療ファクタリングとは?

医療ファクタリングは医療機関や薬局、介護サービス事業者など医療介護業界に特化したファクタリングサービスのことを指します。

医療ファクタリングの仕組み

医療ファクタリングは別名、医療報酬ファクタリングとも呼ばれ、その名の通り医療報酬=レセプト報酬をファクタリング会社が買い取って早期現金化する資金調達方法です。

医療や介護に関係するサービスでは、事業者が顧客(被保険者)からその場で受け取る代金は自己負担分のみとなり、残りは社保・国保といった保険者に請求されます。

これらレセプト報酬の請求先である社保(社会保険診療報酬支払基金)、国保(国民健康保険団体連合会)と各医療介護機関、ファクタリング会社の3社間で契約する3社間ファクタリングが医療ファクタリングの基本になります。

医療ファクタリングの流れ

医療ファクタリングはその特性上、基本的に3社間ファクタリングとなります。

1:医院Aがファクタリング会社に診療報酬債権の譲渡を申し込み、売却(=譲渡)します
2:医院Aとファクタリング会社が社保あるいは国保に診療報酬債権の譲渡を通知します
3:ファクタリング会社は、診療報酬債権の額面から手数料を引いた金額を医院Aへ支払います
4:支払期日、社保あるいは国保がファクタリング会社に診療報酬債権の額面を支払います

医療ファクタリングの種類

医療ファクタリングはレセプト報酬の違いによってさらに3つに分類されます。

診療報酬ファクタリング

病院や診療所、歯科医院などの診療サービスを取り扱う医療機関を対象としたファクタリングです。
医院が保有する診療報酬債権の譲渡により資金を調達します。

調剤報酬ファクタリング

調剤薬局を対象としたファクタリングです。
薬局が保有する調剤報酬債権の譲渡により資金を調達します。

介護報酬ファクタリング

介護施設や福祉施設などの介護サービスを取り扱う事業者を対象としたファクタリングです。
介護福祉事業者が保有する介護報酬債権の譲渡により資金を調達します。

こんな時の強い味方

これらのレセプト報酬は実際に医療などのサービスを提供してから報酬の受け取りまで通常2~3か月ほどかかるため、その間の資金繰りが苦しくなるケースも。
そんなときに医療ファクタリングを利用することで現金化を早めることができます。

負債を伴わない医療ファクタリングは、特に下記のようなケースで強力な味方として機能してくれます。

開業したてのタイミングで

クリニックにしろ介護施設にしろ、診療所の家賃や光熱費、人件費などなど開業時はとかくお金がかかりがちです。
ですが、開業したての事業者はまだ信用力に乏しく、銀行などの融資が受けられないこともあるでしょう。

ファクタリングは融資と違い、審査で重視されるのは売掛先(=請求先)の信用力ですから
社保や国保といった公的機関が売掛先となる医療業界は一般的なファクタリングよりも審査が通りやすいということもあり、開業時の経営のサポートとしてファクタリングは有効な選択肢と言えます。

一時的な資金繰りや設備投資に

医療機関や介護施設などでは様々な設備や消耗品のコストがかかります。
消耗品であっても衛生面を維持するためのコストが別に発生しますし、一時的に患者数が減ったり、スタッフを増員して人件費が嵩んだりすることもありますよね。

特に医療機関であれば日々刷新される技術に対応するため、大掛かりな設備の切り替えが必要になるタイミングが定期的に訪れます。そんな時に、ファクタリングで数か月先の入金を即時資金化できれば、それを元手に最新の設備を導入したり内装のリフォームをしたりといったことも可能になります。常に衛生的で最新の医療サービスを受けられることは患者さんにとっても大きなメリットですから、結果として新規の患者数を増やして収益増に繋がることも十分期待できますね。

医療ファクタリングのメリット

数ある資金調達手段の中から特に医療ファクタリングを利用することで得られるメリットは何でしょう?
ファクタリング自体のメリットはもちろん、医療ファクタリングならではのメリットもいくつか挙げてみましょう。

ファクタリング自体のメリット

開業したて・負債を抱えていても利用できる

これまで資金調達の主だった手段とされていた銀行融資などは、審査の際に利用者自身の信用度が重視されました。経営に苦労していたり、すでに借金を抱えていたりする場合はもちろんのこと、開業したばかりで実績の少ない事業者など、最も必要としている人ほどサポートを受けにくい傾向がありました。

ファクタリングも契約のために審査を受ける必要はありますが、その際に重視されるのは利用者ではなく譲渡される債権の債務者です。債務者が期日にきちんと債権を支払う能力があるか否かが重要視されるのです。
なので、信頼のおける取引先の請求書を用意できるなら、利用者が借金を抱えていようと開業直後だろうとファクタリングであれば問題なく資金を調達できることがほとんどです。

負債にならない

ファクタリングの大きなメリットの一つとして、負債に計上されないという利点があります。
融資=借入ではなく、債権譲渡=売買にあたるため、貸借対照表、いわゆるバランスシートにも流動資産の売却として記録されるのみです。
他の資金調達手段は概ね負債として記録されますから、いざ高額の融資を受けようと思っても評価の妨げになることもあり得ます。
いずれは高額融資を検討している、という方であればファクタリングを活用してバランスシートを綺麗に保っておくというのも一つの選択肢です。

医療ファクタリングならではのメリット

手数料が安い

ファクタリングで現金化できるのは売掛債権の額面から手数料分が割り引かれた金額ですが、医療ファクタリングではこの手数料がとても安くなります。
その理由は売掛債権として譲渡されるレセプト報酬の信用度が、一般企業の請求書に比べて極めて高いからです。

レセプト報酬債権を支払うのは社保・国保といった国の公的機関ですから、一般企業によくある支払遅延や倒産による不払いリスクがほぼ発生しません。
なのでファクタリング会社側はリスク回避のために手数料を吊り上げる必要もなくなり、1~5%といった非常に割安な手数料で契約することができるのです。

通知による信用度への影響がない

一般的なファクタリング契約は2社間ファクタリングといって、利用者とファクタリング会社の間だけで契約を交わすことがほとんどです。
請求先の会社も含めた3社間ファクタリングの方が手数料は安くなるにも関わらず、です。
これはファクタリングの利用を請求先の会社に知られたくないと思う利用者が多いためです。
一般企業では取引にも経営者の意向が反映されますから、3社間形式で請求先の企業に通知がいくと経営難を疑われ、以降の取引に影響がでる可能性も。

ところが、請求先が公的機関である医療ファクタリングではこの通知によるリスクがありません。
近年ではむしろ国として推奨されている資金調達手段ということもあって、ファクタリングの利用数は増加傾向にあり、社保・国保といった公的機関はいくつもの事業者と3社間ファクタリングを行っていますからファクタリングの利用=経営難となるわけではないことなど、よく知っているのです。

利用する際の注意点

良いこと尽くめのようにも見えますが、利用する際の注意点も押さえておきましょう。
これは医療ファクタリングというよりファクタリング自体の注意点でもあります。

受け取れる金額は減る

ファクタリングは必ず手数料が発生します。

医療ファクタリングは基本3社間ファクタリングで契約するため、手数料の割合はかなり低い方ですが、それでも1~5%ほどは手数料として割り引かれると思っておきましょう。
ちなみに、一般的なファクタリングの場合、2社間ファクタリングでは8~20%、3社間ファクタリングで1~9%あたりが相場です。

調達できる金額に限りがある

ファクタリングで調達できる金額は売掛債権の額面-手数料が上限です。
複数の売掛債権をまとめて買い取ってもらうことももちろん可能ですが、レセプト報酬は最大で2か月分しか請求できませんから一度で調達できる資金額には限りがあることに注意してくださいね。

悪徳業者に注意

ファクタリングはあくまで売買であるため、特別な認可や登録が必要ありません。
これを逆手にとって悪用する違法業者が紛れ込み、金融庁から注意喚起がでる事態にもなっています。

医療ファクタリングの手数料相場は比較的安いとはいえ、契約予定のファクタリング会社が違法業者でないかどうかはしっかりと見極める必要があります。
書類に不審な点がないか、契約の実態が貸付ではないかなど慎重に確認しましょう。
見極めが難しい場合は慌てて契約せず一旦持ち帰って確認するか、複数のファクタリング会社を比較できる一括査定を利用してみるのも良いでしょう。

金融庁からの注意喚起はこちら

一般に「ファクタリング」とは、事業者が保有している売掛債権等を期日前に一定の手数料を徴収して買い取るサービス(事業者の資金調達の一手段)であり、法的には債権の売買(債権譲渡)契約です。

 しかし、近時、ファクタリングを装った高金利の貸付けを行うヤミ金融業者の存在が確認されています。また、ファクタリングとして行われる取引であっても、経済的に貸付けと同様の機能を有していると思われるようなものは、貸金業に該当するおそれがあります。

 事業者の皆様におかれては、こうした偽装ファクタリングを利用することのないよう、十分注意してください。

出典元:
金融庁 ファクタリングの利用に関する注意喚起

まとめ

ファクタリングは短期間で債権を現金化できるため、大変使い勝手のいい資金調達手段です。その中でも医療ファクタリングは、ファクタリングのデメリットでもある手数料が比較的安く、レセプト報酬を取り扱う事業者にとって心強いサポーターとして機能してくれます。
一方で1~5%とはいえ必ず減収はするわけですから長期間の無計画な利用は全体の収益減をも招きかねません。無暗に契約を急ぐと悪質な業者に引っかかる恐れもあります。

正しい知識を持って有効な範囲で活用し、スムーズな運営や設備投資に役立てたいですね。

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