
ファクタリングを上手に活用し、自社の経営を安定させる経営者の方がいる一方で、ファクタリングを利用したことでかえって経営状態が深刻な状況になってしまったという経営者の方もいます。
ファクタリングは、その仕組みと特徴をしっかりと理解した上で利用しないと、思わぬ失敗により経営の根本に大きな影響を与えかねません。
この記事では、ファクタリング契約で見られる失敗例から、失敗しないためのリスク管理まで詳しく解説していきます。
ファクタリングの失敗事例
ファクタリング契約で、利用した企業が「失敗した」と感じるシーンはいくつか考えられます。
そんなファクタリングの失敗例の代表的なパターンを紹介していきましょう。
審査に通らない
資金面で何か問題が発生した場合、最終的にはファクタリングという方法で資金調達ができると安心していると痛い目に遭うケースがあります。それが、契約できると思って申し込んだファクタリングで、審査に通らないというケースです。
ファクタリングの特徴として、現金化スピードの早さという点が挙げられます。ファクタリングは一般的な契約でも3日程度、早い場合は売掛債権を即日現金化できるケースも少なくありません。
そのため、ファクタリングは最後の手段として扱われるケースが多く、その最後の手段で審査に通過しないと、資金調達の方法がなくなってしまうという事が考えられます。
ファクタリングの審査自体はそこまで厳しいものではありませんが、審査を行う以上100%通過するということはありません。何らかの理由で審査に通過しないとなれば、企業として窮地に立たされてしまいます。
ファクタリングが最後の手段であるという認識自体は間違っていませんが、確実にファクタリングを利用できるという売掛債権をしっかり確保しておくのが重要です。
契約内容の確認不足
ファクタリングの失敗事例としては、ファクタリング契約の契約書をしっかり確認せずに契約してしまったために、大きな損害が生じるケースが考えられます。ファクタリングは債権譲渡契約ですので、当然契約書が存在します。その契約書には細かな契約内容が記されており、中には必ず確認すべき事項も存在します。
例えば損害賠償や違約金に関する内容や、報告義務の有無、契約の解除条件などは重要な項目といえるでしょう。契約書に記されている項目を無視してしまうと、契約が強制的に解除・破棄される、またその後別の債権で申込んでも審査に通らなくなるなど、大きな損害に発展します。
例えば売掛債権の売掛先企業に関して、何らかの情報が判明した場合に報告義務が生じるとしている契約を結んだとします。売掛先企業が売掛金の入金日までに入金できないと判明した時点で、その旨をファクタリング会社に報告しなければ契約違反になる可能性があります。契約違反となった場合、その場で契約が解除となり、契約時に送金された現金を即返金しなければいけないとなる可能性があります。
契約を結ぶ以上、契約書は隅々まで確認し、内容を理解した上で契約を結ぶようにしましょう。
予期せぬ二重譲渡の発生
申し込み企業の企業内の問題で、売掛債権の管理が杜撰な場合に起こり得るのが債権の二重譲渡です。債権の二重譲渡とは、すでに他者(社)に譲渡済の債権でファクタリングを申込むといった行為であり、意図的に行えば当然犯罪ですし、意図しない場合でも詐欺罪などで立件される可能性があります。
企業によっては多くの売掛債権を同時に管理する必要があるかと思います。その管理体制がしっかりしていないと、どの債権が譲渡済で、どの債権がファクタリングに利用できるか分からなくなってしまうケースが考えられます。
売掛債権は目に見えない権利です。そのため譲渡したかどうかを目で確認することが難しく、複数のファクタリング会社を利用している企業などは慎重に債権を管理しなければいけません。
ファクタリング依存度が高くなり資金繰り悪化
ファクタリングは非常に便利な資金調達法であり、当然合法ですし、中小企業庁などもその利用を推進している方法です。しかし、便利がゆえに過度に利用してしまい失敗してしまうケースもあります。
ファクタリングは売掛債権をファクタリング会社に譲渡し、売掛債権の額面金額から手数料等を差し引いた現金を、売掛金の入金期日前に受け取るという資金調達法です。言い方を変えれば売掛金の前払いシステムであり、そこには必ず手数料が発生します。
つまりファクタリングを利用することで、売上金の一部が手数料として消えるということになります。また、本来売掛金が入金されるタイミングで現金が受け取れなくなるサービスということです。
ファクタリングを利用したことにより、本来売掛金が入金される期日周辺の資金繰りが悪くなり、そのタイミングで再びファクタリングを利用するとなると、なかなかファクタリングの利用から抜け出せません。ファクタリングの利用回数が増えれば、当然それだけ多くの手数料を支払うことになり、損害も大きくなっていきます。
ファクタリングは急場を凌ぐ資金調達法としては優秀ですが、依存度が高すぎるとかえって経営にダメージを与える方法となりかねませんので、その点は十分理解して利用しましょう。
悪徳業者に引っかかってしまう
消費者金融や金融機関等の場合は、必要な資格があったり、都道府県に対する申請が必要であったりしますが、こうした手続きがないというのがファクタリング会社の特徴です。そのために注意すべきが悪徳業者です。
ファクタリング会社を名乗った悪徳業者がいることは間違いありません。そして外部から悪徳業者かどうかを見抜くというのも簡単ではありません。こうした悪徳業者に引っかかってしまうと、違法な金利での貸し付けが行われたり、違法な取り立て行為で自社だけではなく取引先企業にまで迷惑をかけたりと、会社として大きなダメージを受けてしまいます。
ファクタリング会社を選ぶ際は、優良業者であるかどうかをしっかり見極めて申込むようにしましょう。
ファクタリング利用におけるリスク管理
ファクタリングという便利な資金調達法は、しっかりとリスク管理をした上で利用するのがおすすめです。実際に実行できるリスク管理のポイントについて解説していきましょう。
申込む売掛債権を吟味する
まずは、審査に落ちて慌てないように、申込む売掛債権を吟味しておくことが重要です。審査に通りやすい売掛債権は、支払いサイトが短い、金額がそこまで高額ではない、取引先の信用情報が高い売掛債権です。
審査の基準はファクタリング会社ごとに差がありますので、どの債権なら審査に通るか、確定的なことは言えませんが、自社が持つ売掛債権から上記の項目にできるだけ該当する債権で申込むようにしましょう。
契約内容は事前に必ず確認する
契約する以上当然ではありますが、契約書にサインをする前に、しっかりと内容を確認することを忘れないようにしましょう。確認した上で不明な点があれば、必ずファクタリング会社の担当者に確認し、すべての項目に納得の上でサインするのが重要です。
債権管理を適切に行う
ファクタリングを利用する場合は、自社内の債権管理の体制もしっかりと見直し、間違っても二重譲渡などが発生しないような体制を構築した上で利用しましょう。これまではそこまで売掛債権の管理に力を入れていなかったという会社の場合は、特に意識することがおすすめです。
同時に売掛債権を管理する部門に、取引先の与信管理も行ってもらうことで、取引先の状況が把握しやすくなり、審査に通りやすい売掛債権を選ぶ際の参考にもなるでしょう。
長期的な資金計画を立てる
ファクタリングを過度に利用するのはおすすめできません。ファクタリングに対する依存度が高くなると、それだけ自社の利益は減少していきます。自転車操業的にファクタリングを利用するのではなく、長期的視点に立って資金計画を立てるのが重要です。
急な出費に対応するために利用する分にはファクタリングは非常に優秀です。しかし、根本的な運転資金不足などを解消するという点ではあまり推奨できる方法ではありません。
根本的な問題の解決のためであったり、事業拡大のための資金投入という場合には、無駄な出費を削減するような見直しや、金融機関等からの借り入れといった方法も同時に行うことで問題は解決しやすくなります。
継続的にファクタリングを利用しないと経営が成り立たないような状況にならないために、できる対策を行った上でファクタリングを上手に活用できるようにしましょう。
ファクタリング会社選びは慎重に
ファクタリング会社を名乗る悪徳業者は、顧客となる企業を常に探しています。そのために悪徳業者が取る方法は、甘い文言で興味を引くという方法です。「手数料0円」、「審査なし・審査通過率100%」、「申し込みから1時間以内に必ず現金化可能」などといった文言は非常に魅力的です。特に資金繰りに困っている経営者にとっては非常にありがたい言葉でもあります。
しかし、ファクタリング契約において手数料が0円ということはあり得ません。手数料こそがファクタリング会社にとっての利益ですから当然です。また、審査通過率100%ということもあり得ません。100%ということは実質審査をしてないのと同じです。審査なしでファクタリング契約を結ぶファクタリング会社はありません。
こうした甘い言葉に騙されないよう、しっかりとファクタリング会社を見極めるのが重要になります。
まとめ
ファクタリングは非常に便利な資金調達法です。企業を経営する方は、ファクタリングという資金調達法があるということを知っておくだけではなく、どのような特徴があり、失敗する場合にはどのようば失敗があるのかという点を知っておく必要があります。
便利かつ利用しやすい方法だからこそ、その特徴を理解し、適宜上手に活用できるようにしておくのがおすすめです。